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第7話

 GPSの場所は羽田を示している。地図を拡大しながら、帝斗の眉間には更に深く皺が寄せられていった。 「羽田か――。まさか……な」  神妙な面持ちでそう独りごちると、 「悪いが、顧客のフォルダを見せてもらっても構わないか?」  帝斗の問いに「もちろんです」とすぐさま返答がなされる。帝斗が代表を辞してからまだ一ヶ月である。後を継いだ冰も大事にシステムを管理してくれているようで、以前と何ら変わりのない場所に顧客フォルダも保管されていた。  しばし名簿を見流した後、とある人物のところで帝斗はハタとマウスを弄る手を留めた。  高瀬芳則。高瀬貿易株式会社代表取締役――その文字の羅列に僅か眉をしかめる。  本社の所在地は都心の一等地だが、羽田に倉庫を持っていることも帝斗は知っていた。何故なら、帝斗とて大財閥の御曹司だからである。社交界でも時折見聞きしたことのある”高瀬財閥の(せがれ)”であり、当時若くして代表取締役に就任したというこの男が、冰を贔屓にして店に通ってきていたことを知った時は、少々驚いたのも鮮明な記憶として脳裏に焼き付いていた。 「あの……オーナー、何か思い当たることでもあるんですか? 波濤さん――じゃなくて雪吹代表は顧客の誰かとトラブルになっているとか……そういったことなんでしょうか?」  不安げに訊いてくる黒服に、帝斗は微苦笑で眉根を寄せてみせた。 「いや……。僕の取り越し苦労だといいんだがね。それより白夜の予定はどうなっている。さっきの話では大阪に行っているとのことだが、ヤツは今日は泊りかい?」 「はい。龍さん……じゃなくて、氷川オーナーは今度大阪に新規開業するホテルのレセプションにお顔を出されるとのことで、予定では明日の午後にお戻りと聞いてます」  黒服らにとって、氷川も冰も未だに現役時代の名残か、ついつい源氏名が口をついて出てしまうらしい。 「なるほど。遼二を連れて行ったようだね」 「はい、遼二君と二人で、お車で出掛けられました。運転手さんは……いつも氷川オーナーの送迎をなさっている専属の方のようで、もうお一方、男性の方がご一緒のようでした」 「四人で行ったのか? 冰も見送りに来ていたかい?」 「いえ、その時は雪吹代表はまだご自宅だったようです。氷川オーナーたちが店を出て行かれる時は四人でした。車が他にも数台、氷川さんたちの前後を挟むようにして行かれたので、全部で何人で出掛けられたのかは定かではありませんが……」  では、氷川の側近である(りー)という男も一緒だろう。彼は氷川がまだ幼年の頃から忠実な右腕として付き従っている凄腕の男だ。せめて彼だけでもこちらに残っていてくれたら有り難かったのだが、側近ともなれば常に氷川と行動を共にしていて当然である。ここは自分自身が旗振り役となって、一刻も早く冰を救出するのが先決だ。 「事情はだいたい掴めた。ありがとう」  帝斗は黒服に向かってそう言うと、すぐさま龍――氷川白夜――へと電話を入れた。 ◇    ◇    ◇

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