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第13話

「――――!? 何を……」 「何って、僕の趣味は知っているだろう? 自由を奪われたキミを眺めるのが僕の最高の快楽なのさ。それに――暴れられても興醒めなんでね」  高瀬は俊敏な仕草で冰の両腕を麻紐で巻き取ると、容易には動けない程にグルグル巻きにして、すぐ側の柱へと紐を結び付けた。 「……くそッ……! 何が話し合いだ……! こんな……」 「抵抗はよした方が身の為だよ、波濤。――その汚い言葉遣いもキミらしくない。キミはもっと優雅でいてくれなきゃ。それに僕の機嫌を損ねれば、紫月君のことだって保証しないよ? キミの目の前で彼を犯ってあげてもいいんだから」 「……! なッ……」  冰はそれ以上言葉に出すこともできないままで、蒼白な額をビクビクと震わせるしかなかった。 「紫月には……手を出すな。出さないでくれ……」 「それはキミ次第だろう?」 「……分かったから……。もう逆らわない……。アンタの言う通りにする。だから紫月には……!」  必死の懇願に高瀬はニヤりとすると、今度は小瓶を持ち出して中の液体をハンカチに染み込ませ、「()げ」と鼻先へそれを押し付けてきた。 「ほら、早く――思い切り息を吸って十分に嗅ぐんだよ」  それが何なのか、冰には当に分かっていた。恐らくは――いや、百パーセント催淫剤に違いない。欲に耐え切れなくなったところを見計らって犯されるのだろうということも、嫌と言うほど理解できていた。  致し方なく言われた通りに息を吸い込み、その瞬間――無意識にあふれ出た涙が冰の頬を伝って落ちた。 「そう、いい子だね波濤。泣いたりなんかして、キミは本当に可愛い。可愛いくて仕方がないよ」  高瀬は上機嫌だ。抵抗をやめて素直に従わざるを得ない冰の姿を楽しむように、下卑た微笑みを抑えられないといった顔付きだった。  もうあとどのくらいで意思を裏切り、身体が欲を求め出すのだろうか。腕を縛り上げられ、シャツを破かれた淫猥な格好――それを嬉しそうに視姦するこの獣に、すべてを奪われるこれからの一部始終が脳裏を侵す。冰は諦めと憤りの狭間で、精神が壊れてしまいそうだった。  その後、催淫剤が効き出すまでの間、高瀬は冰の目の前に腰を下ろし、ずっと変化の様子を見守っていた。何をするでもなく、身体に触れるでもなく、ただただじっと見つめたままで時折薄笑いを浮かべるだけだ。できることなら、このまま起爆スイッチを押してくれた方がよほどマシだと思える程の恥辱の時間だった。 ◇    ◇    ◇

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