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第14話

 その頃、外の車の中では紫月が縛られた縄を解こうと懸命に身体を動かしていた。高瀬に追加の睡眠薬を嗅がされる際に、思い切り息を止めて、嗅いだふりをしていたのだ。  まだ少し最初の睡眠薬の効果が残っているので眠いには変わりなかったが、遠退く意識を何とかして取り戻そうと歯を食い縛りながら睡魔と戦っていた。 「クソッ! 早くこれを解いて代表を助けねえと……! ったく、どんだけ頑丈に縛りやがったんだ、あのクソ野郎が!」  誰か通り掛かる人でもあればと思いながら懸命に身体を揺する。頼みの携帯電話は当然の如く高瀬に取り上げられてしまったことだし、ともかくは縄を解いて車から出るしか術がない。必死でもがき続け、だが、あまりの消耗に再び睡魔が襲ってくる。ふと、頭上を見上げたその時だった。  車窓から見えていた街灯が一瞬視界から消えたような気がして、うつらうつらと瞳を見開いた。――と、そこに中を覗き込むような人影を確認して、紫月はハッと我に返った。  よくよく目を懲らしてみれば、コンコンと車の窓を叩くその人物は、元オーナーの粟津帝斗であった。 「粟……津さん……ッ!」  すぐに扉が開けられて、紫月は帝斗によって車からゆっくりと引き摺り出された。周囲を見渡せば、帝斗と共に連れ立ってきたのだろうか、数人の屈強な感じの男たちがピッキングの道具らしきを手にして車を取り囲んでいることが分かった。 「紫月! 無事か?」  帝斗は小声で言いながら紫月を抱き締めた。周囲の男たちは龍こと氷川白夜の側近たちである。都内の事務所に残っている者たちを呼び集めて、帝斗が連れて来たのだった。 「すぐに縄を解いてやるからな。怪我はないか?」 「はい……! 俺は大丈夫です。けど代表が……」 「分かってる。冰は中か?」  帝斗は倉庫の階段を見上げながら訊いた。 「はい。代表は俺を助ける為に自分が犠牲になって……早く助けねえと!」 「相手は一人か?」 「そうです。名前は……代表が高瀬とかって呼んでました」  やはりか――帝斗は険しく眉根をひそめると、冰が囚われている倉庫の扉を見上げながら拳を握り締めた。  同時刻――帝斗から連絡を受けた龍こと氷川白夜は、自身の側付きでもあり紫月の恋人でもある鐘崎遼二と共に自家用ジェット機の中にいた。

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