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第20話

「先程、機内で高瀬貿易に関する情報を集められるだけ集めました。それに――どうやらここのインターフォンは、こちらから通話ボタンを押すだけで、中の人間に来訪者の用件が伝わる仕様になっているようなんです」  今さっき到着したばかりというのに、もうそんなことまで調べたわけか。遼二の機敏さと機転には驚かされるばかりだ。氷川の側近たちですら感心顔の中、淡々とした調子で遼二は続けた。 「この倉庫に荷物を納品している運送業者を装って、俺が犯人の気を反らします。オーナーはその間に雪吹代表を救出してください」  遼二の瞳は真剣だ。と同時に隙がない。  手抜かりはない、自分に任せてくれという強い意志が彼の視線に表れていた。 「――分かった。任せる」  氷川はそう言うと、ホルスターから離した手を遼二の肩に掛け、二人は同時に頷き合った。  遼二の提案した作戦はこうだ。  先ずは、高瀬貿易に出入りしている西ノ井運送という業者になりすまして、倉庫事務所に通じるインターフォンから連絡を試みる。そして、今夜必着で依頼されていた至急の荷物を届けに来たと言い、シャッターを開けさせる。中には高瀬と冰しかいないわけだから、事を荒立てたくない高瀬は、とりあえず荷物を受け入れざるを得ないであろう。  受け取りのサインをする為に高瀬を倉庫内へと誘い出し、そこで遼二が彼を確保する。その隙に氷川らが倉庫脇の階段から事務所へと侵入して冰を救い出すというものだった。  高瀬を誘い出すのは遼二が上手くやるというので、氷川は彼に任せることにした。 「事務所の中に呼び掛ける際になるべく大声でやりますんで、雪吹代表に俺の声だと気付いてもらえればと思います」  遼二がそう言うので、帝斗も、 「じゃあ僕も遼二の相方として一緒に行こう。冰は僕の声なら聞き慣れてるだろうから、助けが来たことに気付いてくれるかも知れない」  二人で組んで行くことにする。  何があっても対処できるようにと、氷川の側近たちも倉庫の周囲を取り囲むように散らばり、待機することとした。  こうして遼二らが配置に着いた頃、事務所の中では高瀬が今にも冰を食わんと興奮の真っ只中であった。 「波濤……! はぁっ……波濤……、()れる前に僕のを舐めてくれるかい……? いいだろう? 少しだけだ。すぐにキミのも気持ち良くしてあげるから……! な、波濤……!」  スラックスをズリ下ろそうとした、まさにその時だった。事務所のインターフォンから至急の荷物到着の連絡が入ったのだ。

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