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健斗の手がお湯に触れないように、健斗の頭も体も江彦が全部洗うと言い出した。楽ちんでいいなと思った健斗だけど、さっきから泡だらけの頭がいろんな形にされ遊ばれている。
今度絶対に仕返しすることを決めた矢先、江彦の表情が少しだけ曇った。
「やけども包丁も、本当に心配なんだけど……」
「えーっ」
心配性なのは江彦の悪いところだ。健斗にとってはこんな小さなやけどくらい平気なのに、一大事のような顔で駆け付けてしまう江彦が愛しいとも思う。
だけれど健斗には決めたことがあるので、簡単には辞めるわけにはいかない。
「うっかり手が滑ってすぱっと切れてもいいのか? 血、いっぱい出るぞ」
「それはまじでヤダ。もう怖いこと言うなよ!」
健斗はびしっとひと指しを江彦に向ける。
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