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第26話 嵐を呼ぶ女 3

結局、夕飯の時間になるまで居座り、ちょいちょい鋭いツッコミを入れてくる涼太の姉、美織さんと俺達は、行きつけのハンバーグ専門店に来ていた。 「お昼に頂いたばかりなのに、全然いける、ここのハンバーグ」 「だろ?オレ、ここのハンバーグなら毎日食えるからな!」 何の自慢なんだよ・・・ にしても、この姉弟さっきまでケンカしてなかったっけ? 美織さんの来訪によって、涼太と気まずくならずに済んだけど、他の問題が発生中・・・ 涼太と俺の間に何かあると、おそらく美織さんは確信している・・・! ストレートに聞いて来ないのが、逆に恐ろしい・・・ 「なーんだ。仲直りしてんじゃん」 げ。この声は・・・ 「宮野・・・」 「よかったじゃん、山田。あんなに落ち込んでた甲斐があったな」 「みーやの!それ以上は!」 美織さんの前で余計な事、言うんじゃねえ! 「青のお友達?」 美織さん!絡まないで!頼むから! 「そーです。ちなみに涼ちゃんのお友達でもありま・・・」 宮野が言いかけて、はっと息をのむ。 「え?涼ちゃん、いつ女に・・・」 「なわけねーだろ、こいつと一緒にすんな、のぞむ!」 「こいつ・・・?あんた怪我したいの?」 「したくないです。すいません」 「黒髪ロングヘアの涼ちゃん、めっちゃいい!」 涼太にそっくりな美織さんに見惚れる宮野。 「涼太の姉の美織です。いつも弟がお世話になってます」 「美織さん!宮野は別にいつも涼太のお世話してないから!」 「いーの。ただの社交辞令だから」 バッサリ行くな・・・さすが無神経姉弟。 「涼ちゃんのお姉様。お美しい・・・」 「涼くんより?」 「え?涼ちゃんより・・・」 美織さんの突然の問いかけに口篭る宮野。 「・・・やっぱり答えなくていい。座ったら?」 「はい!失礼します!」 俺の隣にウキウキで座る宮野。 なんで座るんだよ!もー、こいつほんといつも邪魔なんだよ! 「で、涼くんのお相手はどっちなの?」 ええ!?何それ何その質問!!怖い怖い怖い怖い!! そして、何故俺を見る・・・美織さん・・・ 「なななに言ってんだよ、ねーちゃん!あああ相手って、なんのあああ相手だよ!」 「決まってんでしょ、セックスしてんのはどっちかって聞いてるの」 固まる涼太と俺。 「・・・まあいいわ。別に反対するとかじゃないから」 「そこは反対しろよ!オレ、ケツまでバカになるかもしれねぇんだぞ!」 「そーんなに激しい事、してるんだ?」 「はげ!?・・・いや・・・なんでもない・・・てか、おかしいだろ!男同士でセックスとか、恋愛とか!」 「なんで?おかしくないでしょ」 「え?おかしくないの?」 「あんた、今までの変なの思い出してみなさいよ。あんたに付き纏ったり手出してきたのって、男?女?」 「・・・そういやみんな男だ・・・女がドス黒しか見当たらねぇ!」 「でしょ?だから、別にふつーなの」 ええ~!なにその持論・・・いくら涼太でも・・・ 「・・・おかしくないんだ・・・」 ってなに論破されてんの!?いや、俺的にはいいんだけど。丸め込まれんの早すぎだろ、涼太。 「ごちそうさま。涼くん、これ」 涼太に多めの食事代を渡して美織さんが立ち上がる。 「涼くんが元気でやってるってわかったし、帰る。青、大通りまで送ってくれる?」 「あ、ハイ」 なんで俺だよ・・・ 「お姉様!お気を付けて!」 「ありがとう。みやの。涼くんと仲良くしてやってね、それじゃ、がんばって」 「ハイ!がんばります!・・・え?」 よくわからないエールを宮野に送った美織さんと、俺は一緒に店を出た。

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