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第27話 嵐のあとに
涼太と宮野を二人にするのは正直避けたかったが、美織さんのご指名を断る勇気がない俺は、大通りまでの道を、美織さんと並んで歩く。
「青は、涼くんの事が好きなの?」
ついに出たよ。なんにも包んでくれない鋭い質問。
「・・・はい」
「そう。どこが好きなの?料理や運動は上手だと思うけど、頭弱いでしょ、あの子。もしかして顔?」
「はは。確かにアホですよね。正直、顔は好きです」
「顔が好きなら、私でもいいんじゃない?」
隣を歩く美織さんが、俺の手に指を絡めてくる。
突然のことに驚いて、美織さんの方を向くと、目が合って、美織さんがふわっと笑う。
涼太と同じ顔で、涼太がたまにしか見せないような笑顔にドキッとする。
「私、高校の時の青、カッコイイなって思ってたの。久しぶりに青に会って、すごく大人になってて、やっぱりいいなって・・・私じゃ、ダメ?」
ええ!?美織さんが俺を!?
・・・でも俺は・・・
「すみません。顔が同じでも、涼太より美織さんが魅力的でも、俺は涼太がいいんです。涼太だから好きなんです」
「・・・そう」
「すみません」
「謝らないで。私、青のことなんてこれっぽっちも好きじゃないから。相手なら捨てるほどいるし」
「ええ!?」
どーゆー事?なに?この時間・・・
「ごめんなさい。ちょっと試したかっただけ。でも、あんたが涼くんの事どう思ってるか知れてよかった」
「あ・・・ハイ」
なんだよ~!びびった。マジで。
「ほんとはね、あんた達が高校の時から薄々思ってたんだ。青は涼太に惹かれてるんじゃないかって」
「マジですか?美織さん、勘良すぎますって」
「涼くんは、ただのバカじゃない。お母さんゆずりの真性バカよ。体だけ重ねたって青の気持ちにはきっと気付かない」
「ははは。お見通しなんですね、こわいな」
「青が中途半端な気持ちなら、次はみやのに仕掛けるつもりだったんだけど、その必要はないわね」
美織さん、宮野は引っかかりますよ、絶対に!
「置いてきた二人が気になってたんでしょ。送ってくれてありがとう。またね」
大通りに出て、美織さんはタクシーに乗り帰って行った。
店に戻ると、宮野は涼太の隣に移動して食事していた。
「オイ宮野。てめー、移動してんじゃねーよ」
「いいじゃん。席空いたんだから。ね、涼ちゃん」
ね、じゃねんだよ!キモイ!
「はー。やっとで帰ったなあのババァ」
「涼太、美織さんが聞いたら殺されるぞ」
「もういねーからいーんだよ、ババァで!からだ中、痛ぇつってんのに蹴りまくるし!あいつ、ぜっってぇ欲求不満だな!」
捨てるほど相手いるらしいぞ。
「涼ちゃんは欲求不満じゃないの?」
「欲求不満も何も、昨日死ぬほどあ・・・あーダルト動画を観たから!ぜ、全然!」
「ふ~ん・・・」
あっぶねえ!涼太、余計な事言うなよ。また宮野に火がついてめんどくせーことになるから!
「俺、欲求不満なんだよね~。涼ちゃん、相手してよ」
「は?オレ、あんなん二人も無理・・・」
「宮野!てめえはその辺でてきとーな女と遊んでろよ!いつもみたいに!」
涼太~!頼むから、誘導尋問に引っかからないで!黙秘して!
「のぞむ、女と遊んでんだ、てきとーに・・・」
「いや、ちが・・・わないけど、最近はそうでもないよ?他の女達より涼ちゃんのがかわいいし・・・」
必死に言い訳する宮野。へっ、ざまぁ・・・
「うらやましんだよ!てきとーに女とか!オレだって、オレだってなぁ!」
テーブルに突っ伏す涼太。
「ああっ、涼ちゃん!ごめん。なんかごめん!」
なんだこれ。何やってんだよ、こいつら・・・
美織さんのおかげで、涼太を好きでいることが苦しいだけじゃない気がしてくる。
にしても、美織さんの千里眼のかけらでも涼太にないもんかね・・・
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