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第50話 天然ノンケの動揺 2
あんなかわいい女子からモテてんのか、青は。
「涼ちゃん、もしかして、ヤキモチ?」
「は?なんでオレがヤキモチなんか妬かなきゃなんねーんだよ」
「だいたい、男と男で好き嫌いやってるほーがおかしいだろ。あーゆーのが普通なんだよ」
「ふつう、ねぇ」
あいかわらず、楽しそうに話すふたり。『加藤さや』さんが、青の上腕に手をあてて笑っている。
・・・なんか、なんだろ、胃のあたりがモヤモヤする。
なんか、あーゆーの見たくねえかも・・・
「のぞむ、オレやっぱ帰るわ。スマホ、青に渡しといて」
「あ、ちょっと、涼ちゃん?」
青のスマホをのぞむにポイっと投げて、オレは外に出た。
なんか変なもん食ったかな、オレ。
胃のモヤモヤがひどい。
はぁ。なんか、髪切りに行くのもめんどくさくなっちゃったな・・・帰ろ。
「涼太!」
「青・・・」
帰ろうとしたオレを引き止める青。
「スマホ持ってきてくれたんだ。ありがとな」
「暇だったし、何回も着信鳴ってたから、困るかと思って」
・・・なんとなく、青の顔が見れない。
「なんか、涼太怒ってる?」
「はあ?なんで怒んなきゃなんねんだよ」
「そっか。怒ってないなら・・・」
青が急にオレの腕を引いて、顔と顔が近付く。
「ちゃんとこっち見て言えよ。怒ってないって」
青の顔が近くに迫って、ドキッとする。
「ちょ、青、近い!離せ!」
青はオレの両肩を掴んで、唇が触れそうな距離まで詰め寄ってくる。
「青っ、ここ、外っ、ちょっとほんと離れろって」
「誰かに見られたら困る?」
「当たり前だろ!つーか、さっきの女の子とかに見られたら、困るのは青の方だろ!」
「涼太、嫉妬してんのか?」
「え・・・」
嫉妬?誰が、誰に?
もしかして、オレ、が、さっきの女の子に・・・?
「こっち向け、涼太」
「嫌だ」
顔が、上げられない。たぶん今、オレはひどい顔をしていると思う。
自分が思っていた事が、青に分かってしまうのが恥ずかしい。
あの女は誰で、昨日何があったのかとか、さっき楽しそうに話してたのは何だとか、なんで、オレの事好きって言ったのに・・・とか。
これが嫉妬・・・?こんな事思ってるなんて、青に知られたくない。
「涼太、泣いてんの?」
「泣いてねえ」
嘘じゃない。本当に泣いてない。
「でも、泣きそーな顔、してんだけど」
「好きだ」
「・・・え?」
「ってオレが言ったら、どうなんの?」
「今、ここで、涼太が立ってられないくらいキスする」
なんだよそれ。バカじゃん。
「誰が見てるかわかんねーじゃん」
「誰が見てても関係ない」
「ほんとバカだな、おまえ」
「涼太。俺の事好きだって言えよ」
言えるわけねーだろ。こんな公衆の面前でキスとか、しかも男同士で。マジでどうかしてるよ、おまえ・・・
今、自分の気持ちに気付くなんて、ほんとにどうかしてる・・・オレも。
「青が、好きだ」
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