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第64話 悪意 1

「はあ~」 ああ、最近青とセックスし過ぎで体が痛い。 なんか、どんどん気持ちよさ増しちゃってっし、どーしよ・・・。 「涼太さん、お疲れですか?」 「ごめん、タケル、大丈夫だよ。どお?綺麗に縫えた?」 仕事に集中しなきゃ。後輩もできて、ちゃんと仕事教えなきゃなんないのに、変な事ばっか考えて、なにやってんだオレ。 「チェックしてもらっていいですか?」 ひとつ下の後輩、加藤タケルが、裾の長さを補正したパンツをオレに渡す。 「うーん。だいたいオッケーだけど、最後もうちょい糸重ねたほうがいいな。でも真っ直ぐ縫えてっし、綺麗だよ」 「ありがとうございます!」 「まだ時間あるし、あと一本縫ったら休憩入ろっか」 「はい!」 ああ~、後輩!素直でかわいいな!癒されるわ~。 タケルは、去年、高校のインターンシップでこの店に来て、高卒で社員になったやつ。大卒で入社するスタッフが多い中で、同じ高卒社員の後輩ができたのは正直嬉しい。 大卒だと、後輩でも年上だしな~。 トレーニング任されたのが、タケルでよかったわ。 覚えも早いし、いい子だし、言う事聞くし、顔も悪くないし、なんか大型犬みてーなんだよな、こいつ。 「俺、トレーナーが涼太さんでほんと良かったです!」 タケル・・・!なんてカワイイやつなんだ~! 「涼太、なんか機嫌いい?」 「あ、わかる?わかっちゃう?」 「だって、今日のメシ、俺の好きなもんばっかだし」 そういえば今日は、肉じゃがになめこの味噌汁にほうれん草の胡麻和え。青の好きなもんばっか作っちゃったな。 「いや~、最近後輩がかわいくてかわいくて。オレも先輩として板についてきたきたっつーかね」 「ふーん。せいぜい宮野ん時みたいに痛い目合わねぇようにしろよ」 はあ? 「おまえらみたいな変態がそーそーいるわけねーだろ。タケルをおまえらと一緒にすんな」 「・・・ならいいけど」 青の心配性もここまで来ると病気だな。心配いらねぇっつーの。 ーーその頃、タケルは家で自分の店のSNSをチェックしていた。 「あー、涼太さん、マジかわいい!」 ーーSNSにアップされた写真には、新作の服を着ている涼太が写っている。 「タケル、あんたいたの?たまに帰ってきた実家にゲイがいるなんて、ほんとキモイわ」 「姉貴に別に迷惑かけてねーだろ」 「家族にまでゲイがいると思うとほんと不快なんだけど」 ーータケルの姉、さやがチッっと舌打ちする。 「涼太さんマジさいこー♡」 ーー自分のスマホを胸の前で、ぎゅっと握りしめるタケル。 え・・・りょうた? 「ちょっと、それ見せて」 「いいけど、惚れるなよ、姉貴」 !こいつ・・・。 「職場の先輩なんだよね~。ちょーかわいくない?」 タケルと一緒に働いてたんだ・・・。 ーー青と涼太に味わわされた屈辱を思い出し、怒りが込み上げてくるさや。 「タケル、いいこと教えたげよっか」 「姉貴、涼太さんの事知ってんの?」 「こいつ、あんたとお仲間だから」 「え!マジで!?」 「男に突っ込まれて喜んじゃうヤツなの。よかったわね、惚れてる相手が同族なんて、ラッキーじゃない」 「マジか~!なんか燃えてきた!」 フン。私に恥をかかせた代償は大きいんだから。 ーー青と涼太は、近くに魔の手が迫っていることを知るはずもなかった。

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