80 / 210
第80話 純愛 2
病院に着いて、タケルが処置室へ運ばれる。
オレは廊下のソファで看護師にもう一度状況を説明して、ただその場で待つことしかできなかった。
「涼くん?」
名前を呼ばれて顔を上げると、美織が白衣で立っている。
「ねーちゃん・・・」
ここ、みおりの病院だったのか・・・
「もしかして、運ばれてきたの、青?」
「いや、後輩。ねーちゃんが診んの?」
「私は呼吸器外科だから、救急か、整形の医者が診るんじゃない?」
「・・・頭から血出てて・・・あいつ大丈夫なのかな?」
「頭部は出血しやすいし、少し切れただけでも結構出血量が多いの。処置室に運ばれたのなら、たぶんそんなに酷くないはずよ」
そーなのか・・・
「涼くん、顔色悪いわ。大丈夫よ、ここの外科はみんな優秀だから。じゃあ、私行くわね」
美織が去って暫くして、処置室からストレッチャーにのせられたタケルが出てきた。
「タケル!」
「涼太さん・・・」
意識戻ったんだ・・・。良かった。
「脳震盪、起こしてたみたいですね。こめかみに裂傷があり、縫合しました。そっちは大したことないですね。念の為、一日入院、明日もう一度検査となります」
医者から説明を受けたオレは、店長に連絡してタケルが運ばれた病室へ入る。
「涼太さん、迷惑かけてすみません」
「なんでタケルが謝るんだよ。ごめん。オレのミスなのに。オレなんか庇って怪我してどーすんだよ、タケルになんかあったらオレ・・・」
「ふふっ、涼太さん、心配し過ぎですよ。でも、怪我して心配してもらえるなら、俺、毎日でもします」
「笑えねーから」
はぁ~、ほんと大したことなくて良かった。
「タケル、なんか欲しいもんとかあったら言って」
「あ・・・じゃあ・・・涼太さんがいいです」
え!?
「嘘です。いや、嘘じゃないけど・・・涼太さんさえよければ一晩、付き添ってくれませんか?」
ええ!?
「駄目、ですよね。恋人も心配するだろうし」
青にまた心配させたくない。でも、オレの責任だし・・・
ヴーヴーヴーヴー
スマホの着信を見ると、店長からだった。
「店長からだ。ちょっと出てくるわ」
病棟の談話スペースで電話に出る。
『あ、涼太?タケルの親御さんに連絡したんだけど、今日は病院行けそうにないらしい。明日、午前中には顔出すそうだから、タケルに伝えといてくれ』
「わかりました」
『あと、本部からの監査入るから、明日は臨時休業になるし、おまえらゆっくり休めよ』
「はい。ありがとうございます。すみません。ご迷惑お掛けして・・・」
店長との電話を切って、青に電話をかける。
・・・出ねえ。
バイトかな・・・
後でもっかい、かけるか。
病室に戻り、タケルに店長の話を伝える。
「なんか、大事になっちゃいましたね」
「そうだな。・・・オレ、一晩、付き添うよ。オレの責任だし」
それくらいしねえと、怪我したタケルに申し訳ない。
「涼太さんのせいじゃないですよ。業者が悪いんです。あんな積み方してたら崩れますよ。でも・・・」
タケルがオレを見て、ニコッと笑う。
「涼太さんと一緒にいれるから、俺、業者にも感謝してますよ」
ともだちにシェアしよう!