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第82話 純愛 4

翌朝6時 ーー目が覚めたタケルは、握られた手の横でベッドにもたれて眠る涼太を見つめる。 涼太さん、手、ずっと握っててくれたんだ・・・ ーー涼太の寝顔を見て、タケルの胸はぎゅうっと締め付けられたような痛みを覚える。 この髪に、唇に、肌に、俺が触れたとしたら、涼太さんはどう思うんだろう。 気持ち悪い・・・? それとも、気持ちいいって思ってくれる? ーータケルは繋いでいない方の手で涼太の髪に触れる。 少しクセがあって、ふわっとしているけどそんなに柔らかくはない髪。 意外・・・もっと細くて柔らかそうに見えるのに。 涼太さんに、実際に触れてみないとわからない事がきっとたくさんある。 俺は、それが知りたい。 「う・・・ん?・・・あ、オレ、めっちゃ寝てた・・・」 腰を曲げた状態で寝ていたため、オレは体が痛くて目が覚める。 手は、タケルと繋がれていたままだった。 「涼太さん、目が覚めましたか?ありがとうございます。ずっと繋いでてくれたんですね」 タケルが、嬉しそうにオレを見て柔らかく笑う。 「タケル、大丈夫そう?悪いけどオレ、そろそろ・・・」 帰らないと、青が気になる。 「大丈夫です。わかってます。でもあとちょっとだけ」 コンコン ドアをノックする音がして、オレは立ち上がり、繋いだ手を離そうとするが、タケルはそれを許してくれない。 「はい、どうぞ」 タケルがノックに返事をすると、ドアが開き、そこにいたのは 「あ、青・・・なんで・・・」 「朝帰るって言うから、迎えに来た」 青が病室に入って来てドアを閉める。 青の視線の先に、タケルと繋がれたオレの手があるのに気付いて、手を引こうとしたが、タケルに強く掴まれていて離せない。 「青、こここれは、何でもなくて・・・」 青の目がすわってるよ~。やばい。これはほんとにやばい。 「俺が手を握ってて欲しいってお願いしました。それ以上の事は何もしてません」 タケルが、青に向かって言う。 「た、タケル、もう離せって」 それでもタケルは離してくれない。 「涼太、こっち向け」 オレのすぐ傍まで来た青に、顎を掬われて青の方を向かされる。 「ぅんんっ」 突然、青に深くキスされて、オレはパニックになる。 タケルが見てんのに、タケルに手を掴まれたままなのに・・・ 青の舌に咥内を蹂躙されて、どうしようもなく気持ちよくなってくる。 「あ・・・はぁ、あお・・・」 タケルの手が離れて、オレは青の腕にしがみつく。 「涼太が迷惑かけて悪かったな。でも、涼太はもう返してもらう」 青がオレの肩をぐっと引き寄せて、タケルに言う。 「涼太さんは物じゃないです」 「物じゃない。だけど、俺のだ。自分の大事なものを何度も他人に貸すほど、俺は心が広くないんで」 タケルを見下ろして青が言う。 「帰るぞ」 「あ、青、ちょっと待っ・・・」 青に手を引かれて、オレはそのまま病室を出た。 ーー涼太と青が病室を出た後、タケルは、涼太と繋いでいた方の手のひらを見つめて、ぎゅっと握りしめる。 さっきまでずっと俺と繋がれてたのに・・・涼太さんの手は、もう違う手と繋がれてる。 ーータケルは、青にキスされて溶けていく涼太を思い出す。 なんだよ、あの顔、あの声・・・くっそ・・・

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