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第89話 恋じゃない 1
「涼ちゃん、お疲れ様~」
「のぞむ、おつかれ」
駅のホームでのぞむと出逢い、同じ方向の電車に乗り込む。
最近、遅番の帰りはいつものぞむと出逢うな。
「タケルくんもお疲れ様」
「ハイ。お疲れ様です、今日も精が出ますね、のぞむさん」
「はは、タケルくんほどじゃないけどね」
タケルとのぞむがニコッと笑い合う。
なんか、この二人も仲良くなってるみてーだしな。
「涼ちゃん、山田と仲良くやってんの?山田に聞いても冷たくあしらわれちゃうし、俺さみしーな」
青、のぞむの事、嫌いだしな・・・
「仲良くってゆーか、ふつー」
「ふつーって?ふつーにエッチしてるって事?」
は?ちょ・・・タケルもいんのに、電車の中なのに、何聞いてくるんだよ!
「う・・・ん。まあ、それなりに・・・」
オレは周りに聞こえないように、小さく答える。
タケルの方をチラッと見ると、あからさまにムスッとしている。
「オレの話はいーだろ!」
「よくないよ、だって俺もタケルくんも、涼ちゃんが山田とどーなってるかが気になってるんだから」
なんで気にするんだよ~!
男どうしのヤッたヤらない聞いて面白いワケねーだろ!
「ね?タケルくん?」
「俺は別に・・・はっきり言って、涼太さんと恋人の仲睦まじい話なんて聞きたくないです」
だよな。タケル、もっと言ってやってくれ~!
「でも、涼太さんが抱かれて、どんな風になってるのかは知りたいですけど」
は?タケルまで何言い出しちゃってんの・・・。
ああ、周りの乗客の視線が痛え・・・。早く駅着かねーかな・・・。
駅に着いて、ドアが開く。
「オレ、急いでるから!じゃあな!」
のぞむとタケルから逃げるように電車を降りて駅から離れる。
はぁ~。なんなんだよ、あいつら。
「ただいま」
「おかえりー」
部屋に帰り、ソファに座る青の横に腰を下ろし、背もたれに寄りかかる。
「涼太、なんかいつもより疲れてる?」
「・・・そだな。無駄に疲れたかも」
「じゃあ、おかえりのキスで癒してやる♡」
ちゅ
イヤイヤ。そんなもんで癒されるワケねーだろ。
ハンバーグ食いたい・・・。
「風呂入ってくるわ」
「俺が洗ってやろーか?」
青がそう言って、オレはこの前、青に体を洗われた事を思い出して、顔が熱くなる。
「いいいいいい!自分で洗う!」
「涼太、顔真っ赤。かーわい♡」
か、かわっ?
「うるせぇ!絶対入ってくんなよ!」
「それ、フリ?」
「なわけねーだろ!蹴り飛ばすぞ!」
「ハイハイ」
もー!
はあ。疲れる・・・。
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