88 / 210

第89話 恋じゃない 1

「涼ちゃん、お疲れ様~」 「のぞむ、おつかれ」 駅のホームでのぞむと出逢い、同じ方向の電車に乗り込む。 最近、遅番の帰りはいつものぞむと出逢うな。 「タケルくんもお疲れ様」 「ハイ。お疲れ様です、今日も精が出ますね、のぞむさん」 「はは、タケルくんほどじゃないけどね」 タケルとのぞむがニコッと笑い合う。 なんか、この二人も仲良くなってるみてーだしな。 「涼ちゃん、山田と仲良くやってんの?山田に聞いても冷たくあしらわれちゃうし、俺さみしーな」 青、のぞむの事、嫌いだしな・・・ 「仲良くってゆーか、ふつー」 「ふつーって?ふつーにエッチしてるって事?」 は?ちょ・・・タケルもいんのに、電車の中なのに、何聞いてくるんだよ! 「う・・・ん。まあ、それなりに・・・」 オレは周りに聞こえないように、小さく答える。 タケルの方をチラッと見ると、あからさまにムスッとしている。 「オレの話はいーだろ!」 「よくないよ、だって俺もタケルくんも、涼ちゃんが山田とどーなってるかが気になってるんだから」 なんで気にするんだよ~! 男どうしのヤッたヤらない聞いて面白いワケねーだろ! 「ね?タケルくん?」 「俺は別に・・・はっきり言って、涼太さんと恋人の仲睦まじい話なんて聞きたくないです」 だよな。タケル、もっと言ってやってくれ~! 「でも、涼太さんが抱かれて、どんな風になってるのかは知りたいですけど」 は?タケルまで何言い出しちゃってんの・・・。 ああ、周りの乗客の視線が痛え・・・。早く駅着かねーかな・・・。 駅に着いて、ドアが開く。 「オレ、急いでるから!じゃあな!」 のぞむとタケルから逃げるように電車を降りて駅から離れる。 はぁ~。なんなんだよ、あいつら。 「ただいま」 「おかえりー」 部屋に帰り、ソファに座る青の横に腰を下ろし、背もたれに寄りかかる。 「涼太、なんかいつもより疲れてる?」 「・・・そだな。無駄に疲れたかも」 「じゃあ、おかえりのキスで癒してやる♡」 ちゅ イヤイヤ。そんなもんで癒されるワケねーだろ。 ハンバーグ食いたい・・・。 「風呂入ってくるわ」 「俺が洗ってやろーか?」 青がそう言って、オレはこの前、青に体を洗われた事を思い出して、顔が熱くなる。 「いいいいいい!自分で洗う!」 「涼太、顔真っ赤。かーわい♡」 か、かわっ? 「うるせぇ!絶対入ってくんなよ!」 「それ、フリ?」 「なわけねーだろ!蹴り飛ばすぞ!」 「ハイハイ」 もー! はあ。疲れる・・・。

ともだちにシェアしよう!