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第88話 ライバル認定 2
俺の(山田の)涼ちゃんと、モブごときがイチャつくなんて、許せない!
「涼ちゃん、ちょーっと距離近いんじゃないかな?山田が悲しむんじゃない?」
「あ・・・」
タケルくんから涼ちゃんが少し離れる。
・・・山田、愛されてんな・・・いいな、そういうの。
俺は今までテキトーに女の子と遊んで過ごして、楽しければそれでいいと思ってた。
涼ちゃんをホテルに迎えに来た山田を見るまでは・・・
涼ちゃんが好きだけど、今は、山田との仲を掻き回そうなんて思ってない。二人が壊れた時にチャンスがあればそれでいい。
「じゃあ、オレこっちだから。バイバイ、のぞむ。お疲れ、タケル」
「バイバイ涼ちゃん、気をつけてね」
「涼太さん、お疲れ様です」
自宅の最寄り駅で、涼ちゃんと別れる。
さーて。このモブにちょっと牽制かけときますか・・・。
「タケルくん時間ある?せっかくだしお茶でもして帰らない?」
「はあ・・・」
なんで?という顔をしながら、タケルくんは渋々返事をする。
駅の近くのカフェに入って、ふたつコーヒーを買い、ひとつをタケルくんに渡す。
「ありがとうございます。頂きます」
結構、礼儀正しい子なんだな。
「俺が誘っちゃったからね~」
とりあえず・・・
「タケルくんは涼ちゃんが好き、みたいだね?」
「はい。好きです」
タケルくんはストレートに答える。
「のぞむさんも、好きなんですか?」
「うん。好きだよ。だから涼ちゃんに他の男が近づくのはおもしろくないんだよね」
「・・・涼太さんの恋人、あなたの友達なんですよね?」
「そうだよ」
山田は友達と思ってないだろーけど。
「悔しくないんですか?」
「悔しかったし、何がなんでも涼ちゃんを手に入れてやるって思ってた。けど・・・」
タケルくんがじっと俺の目を見る。
「山田には勝てないって思ったから。だから今は悔しくない。諦めてもないけどね」
「俺は、涼太さんがどんなにいい人と付き合っていようが、俺の方が好きだって自信あります」
ほー。モブのクセに言うじゃん。
「山田に張り合おうなんてバカな事、考えない方がいいよ。あいつ、涼ちゃんの事になると人殺しかねないから」
「のぞむさん、何が言いたいんですか?」
こっちもストレートに言わなきゃなんないか。
「涼ちゃんから、手引いてくんない?ライバルは一人でも少ない方がいいからさ」
俺が笑顔で言うと、タケルくんが無言で睨んでくる。
「言いたいことはそれだけですか?」
返事をせず、笑顔で返す。
「失礼します」
タケルくんが席を立って、俺の横を通り過ぎようとした時
「俺、涼太さんは大事なんで手は出しませんけど」
耳元でタケルくんが言う。
「どーでもいい人は、抱き潰して黙らすくらいの事はできるんで。気をつけてくださいね、のぞむさん」
・・・え。
唐突な言葉に驚いて、タケルくんを見上げる。
「コーヒー、ごちそうさまでした」
タケルくんはニコッと笑って立ち去る。
・・・え、今の何?
抱き潰すって、俺?を?
「何アレ何アレ!こっわ!全然ワンコっぽくない!」
そんな言葉とは裏腹に、俺の心臓は、なぜかうるさく鳴るばかりだった。
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