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第87話 ライバル認定 1
俺、宮野のぞむハタチ。
大学同期の山田 青の同棲相手、小林 涼太に恋をしている。
涼ちゃんは、女好きの俺が見てきた中でも、一番キレイだと思う。・・・でも女じゃない。男。
同性にこんなに惹かれたことなんて、今まで一度もないのに、なぜか、涼ちゃんをひと目見た瞬間に、雷が落ちたのかと思うほどの衝撃を受けた。
まさに、青天の霹靂ってやつ。
なんとか自分のものにしようと思ったが、山田の邪魔が入って、見事に失敗。
だけど、俺は諦めたわけじゃない。今は山田とラブラブでも、きっと崩れる時が来るはず。俺はその時が来るのを、じっと待っている。
・・・なのに。
最近、山田以外の男の影が、涼ちゃんに付き纏っている。
せっかく涼ちゃんの職場の近くでバイトしてるっていうのに。帰りが一緒になることもあったのに。
ここ最近は、涼ちゃんはいつも、あの男と一緒に帰ってる。
身長180ほど。短髪つり目の人懐っこそうなやつ。モブAと名付けよう。
アイツ、絶対涼ちゃんの事好きだわ。
俺の直感がそう言っている。
今日も一緒にいるし。
俺の(山田のだけど)涼ちゃんに、馴れ馴れしくして、ほんと不快。
いつもなら、涼ちゃんが誰かと一緒にいたら声掛けないけど、今日はかけてやる!
「涼ちゃん、久しぶり。今帰り?」
「のぞむ、久しぶりだな。最近帰り会わねーじゃん」
ああ~。久々近くで見る涼ちゃん、眩しすぎる・・・。
モブAがペコッと頭を下げてくる。
「どーも。おんなじ職場の人?」
「あー、うん。いっこ下のタケル」
年下か。どーりでワンコっぽい。
「こっちは、のぞむ。青の友達」
「あお?」
涼ちゃんの言葉に、モブAことタケルくんが首を傾げる。
「あ、青ってゆーのは、その・・・」
山田の事を説明しづらいのか、涼ちゃんが口ごもる。
「涼ちゃんのカレシだよ」
俺がそう言うと、タケルくんがハッとした顔をする。
「あの人の友達なんですね・・・」
あからさまにガッカリした様子のタケルくん。
かーわいそ。
「あ、青の事はいいから!のぞむもおんなじ方向だし、みんなで帰ろーぜ」
涼ちゃん、およそ協調性があるようには思えない無表情なのに、コミュ力備えてるなんて、ほんとカワイイんだから。
駅までの道を、涼ちゃんを挟んで3人で歩く。
「タケルくん、頭ケガしてんの?」
特に共通の話題も無い俺は、彼のこめかみに貼られたガーゼを指差して聞く。
「オレのせいでケガさせちゃったんだよ」
涼ちゃんが申し訳なさそうに言う。
やば。涼ちゃんにこんな顔させるネタ振っちゃった・・・。
「涼太さんのせいじゃないですって!配達業者の規定違反って結果出たじゃないですか。治療費も業者が負担することで示談になったし」
「でも、タケルがオレをかばってくれたから、ケガしたわけだし・・・」
「ほんと気にしないでくださいって」
タケルくんが涼ちゃんの肩に手を置いて、顔を覗き込んでニコッと笑う。
「うん・・・。ごめんな」
涼ちゃんがタケルくんを見上げて謝る。
・・・なにコレ。
イチャついてるようにしか見えないんですけど!
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