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第142話 もう一度 2
「触っていいって言えよ」
俺の言葉に何も返さない涼太。
涼太の肩に手を伸ばすと、ビクッと体を強ばらせるのがわかった。
・・・涼太のこの反応、懐かしいな。
やべぇ、めちゃくちゃカワイイ。
肩に触れた手に力が籠る。
「触んな」
俯きながら涼太が小さく呟く。
「なんで?俺の事、会わない間に嫌いになった?」
二年前に、酷い事を言った自覚はある。涼太から自分が離れるために、ああ言うしか無かった。本心じゃない。だけど、涼太を傷付けたのは事実で・・・
「・・・誰かと一緒に住んでんだろ?」
・・・は?
「二年も経ってんだ。そうなるのはおかしい事じゃねぇ」
イヤ、待て涼太。
「だけど、そんな相手がいるのに、昔の相手に触んのはおかしい事だろ」
ちょっと・・・何をどう考えたらそんな答えに辿り着くんだよ。
「俺は、一生涼太だけだって言っただろ」
涼太が二つ並んだドアの方を見る。
「じゃあなんで、一人暮らしなのにこんな部屋住んでんだよ、誰かいるのは想像ついてんだよ!」
・・・はあ。
「来い」
涼太の腕を引き並んだドアの前に連れていく。
「こっちが俺の部屋」
左側のドアを開けて涼太に説明する。
「こっちの部屋開けてみろ」
俺がそう言うと、右側のドアを躊躇いながらも涼太が開ける。
「やっぱ、誰かいんじゃん・・・」
部屋に置かれたベッドとチェストを見て涼太が言う。
「よく見ろって!見覚えあんだろ!」
「・・・あ、これ、オレ、の・・・?」
ようやく自分が使っていたベッドとチェストだと認識した涼太が、部屋に一歩踏み入れる。
「俺が、涼太を忘れて他の誰かと一緒になってるって考えてたわけだ」
涼太の背後から腕を回し、肩を引き寄せ抱きしめる。
「リビングのソファだって、前から使ってたやつなんですけど。気付かなかったのかよ」
「全然」
二年経っても、涼太は成長してねーな・・・。
余計な勘繰りするようになっただけじゃねーか・・・。ったく。
「俺はずっと涼太だけだ。・・・お前は?」
・・・まさか、タケルに手出されてたんじゃねぇだろうな・・・。だったら絶対許さねぇからな。
「・・・・・・・・・・・・」
涼太が気まずそうに沈黙を続ける。
「タケルと、そういう仲になったとか?」
「は?タケル?んなわけねえだろ。まあ正直揺れた事もあるけど、タケルとは無い」
とは!?・・・ってことは他にいたって事かよ!
「女と・・・付き合ってた」
は!?涼太が、おおおおお女と付き合ってた!?
「・・・五人くらいと付き合って・・・」
ごごごご五人も!?
「結局振られたけど」
オイオイオイオイ!嘘だろ!
驚きすぎて、言葉が出てこない。
「・・・青?」
「涼太・・・ど、童貞は・・・」
やっとで出てきた言葉が、童貞、とは。自分でも情けない。でもそこが一番気になる!
「・・・」
なんで答えないんだ?
まさかとは思うけど、五人も付き合ってたら、もう・・・
「涼太・・・」
「・・・悪いかよ」
「え?」
「どーせオレは、どんなに女と付き合えても、未だに童貞だよ!文句あんのか!」
・・・・・・文句、あるわけねえだろ。
俺は、涼太を抱きしめる腕に力を込める。
「・・・よかった」
「なにが良かったんだよ。オレは、24になってもまだ童貞なんだぞ!恥ずかしくて誰にも言えねーよ!」
「涼太、安心しろ。そんなことより、もっと誰にも言えない恥ずかしい事、今からするんだから」
後ろから抱きしめたまま、涼太の首筋に指を滑らせる。
「っ!やめろよ。くすぐってーだろ!」
「・・・くすぐったいだけか?」
指をもう一度滑らせると、涼太の肌が熱を帯びたのを感じた。
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