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第141話 裏 もう一度 1

*このお話は本編のおまけになります。のぞむ視点になります。ご注意ください。 「涼ちゃん、やっぱ行っちゃったね~」 「そうですね。まあ、期待なんかしてなかったですけど」 空港での一部始終をこっそり見ていた俺は、ひとり取り残されたタケルくんに話し掛ける。寂しそうな中にもどこかホッとしている様なタケルくんの横顔。 「賭けは、俺の勝ち、ってことでいい?」 「・・・そうなりますね」 山田と涼ちゃんが去っていった方をずっと見つめていたタケルくんが、ようやく俺の方を見る。 「後悔してない?」 「はは。少しだけ。でも、俺が言い出した事ですから」 俺は、ふたりが日本に帰る日に、山田を空港まで連れてきて欲しい、とタケルくんに頼まれていた。 そこで、涼ちゃんが山田を選んだとしたら、タケルくんは涼ちゃんをキッパリ諦めて、俺の気持ちに応えてくれる、そう約束してくれていた。 もし、涼ちゃんがタケルくんを選んだら、俺はタケルくんを諦める。 賭け、とはその事だった。 涼ちゃんが山田を選んだ今、タケルくんを想い続けてきた俺は、晴れてタケルくんと付き合う事ができる。 できるんだけど・・・ 「いいよ、無理しなくて。報われない恋にはもう慣れたから」 タケルくんを困らせたくないし。 「いいんですか?」 正面に立ったタケルくんが、俺の後頭部に手を回し髪を掴む。 後ろ髪を引かれて少し上を向かされ、タケルくんの顔が至近距離まで迫り、お互いの唇が触れそうなところで止まる。 「俺の事が好きって言ったら、ここで塞いであげます。こんな、空港の真ん中で恥かきたくないなら、黙っててください」 わかっててやってるの、狡いなぁ。 タケルくんに、駅の構内で同じような事をされて、俺はこの気持ちに気付いたんだよ。 黙れるワケないじゃん。 「タケルくんが好きだよ」 あの時からずっと・・・ 女の子達に現を抜かしていた自分が、もう思い出せないくらい。 タケルくんの唇の感触に、今まで感じたことの無い高揚感と、愛しさが込み上げてくる。 「周りから見られてますよ。いいんですか?」 「・・・いい。タケルくんが好きだから」 「どう見たってタチのあんたがそんな顔してるの、なんかグッときますね」 俺は、女の子が大好きで、涼ちゃんを抱きたくて、なのにタケルくんに恋をしてしまった。 間違いでしてしまったようなこの恋が、いちばん大切な恋になるなんて思いもしなかった。 これからもっと、この恋に溺れていくんだろうな。 そう思いながら、人の行き交う空港の真ん中でタケルくんとのキスを繰り返した。

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