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第144話 カミングアウト 1
涼太が帰国してから、同棲を再開した俺たち。2年のブランクなんて無かったかの様に順調でラブラブな毎日だった。
本社勤務になった涼太と、大学病院で研修医をしている俺の休みが一ヶ月ぶりに重なった日曜日の今日、俺は心に決めていたことがある。
「涼太、今日ちょっと付き合ってくんね?」
「いいけど・・・どこ行くんだよ?遠出とかだったらやだからな。めんどくせぇ」
「遠くねーよ。車で20分もかかんねぇとこ」
「ってここ、青んちじゃん」
実家の前に車を停めて、涼太を連れて家の中へ入る。
「いらっしゃい、涼太くん。久しぶりね~。高校生の時から全然変わらないじゃない。相変わらずカワイイわ~」
「おばちゃん、ご無沙汰してます。おばちゃんも全然変わんないじゃん。相変わらず若いね」
「いや~ん。も~!ほんとうまいんだからぁ!」
涼太に、若い、と言われて舞い上がる母。社交辞令だっつーの・・・。
「涼太くん、コーヒー苦手よね?ココアでいい?」
「ありがと、おばちゃん。オレがコーヒー嫌いなのも覚えてくれてるんだ。さっすが!」
「母さん、話あんだけど」
仲良さげに話す二人の間に割り込む。
何かを察知したのか、母が俺たちをリビングのソファに座るように促す。
「なんの話かしら?」
母の問いかけに、涼太もきょとんとした顔で俺を見る。
「前にも言ったけど、俺、涼太が好きだ。結婚とかできないけど、ずっと一緒にいたいと思ってる」
「あ、青・・・?」
俺の言葉に、動揺を隠しきれない様子の涼太。
「・・・そう。で、涼太くんはどう思ってるの?」
「あ・・・オレ、は・・・」
「青が勝手に盛り上がってるだけなんじゃないの?」
「・・・違うよ。おばちゃん、ごめん、オレも青が好きだ。ごめんなさい」
母に向かって頭を下げる涼太。
何も言わず突然連れて来て、こんなことさせたくなかった。でも、俺は涼太の本当の気持ちを知りたかった。
「謝らないで、涼太くん。二年前、青に聞いた時には、本当に驚いたしショックだった。今も、認められるかって言われたら、正直わからないわ」
「母さん、それでも俺は・・・」
「涼太くん、青の事、捨てないって約束してくれる?」
え・・・?
「青は、きっとあなた以外愛せないんだと思う。もし、涼太くんに捨てられたら、きっとこの子はダメになっちゃう。息子がつらい思いをするのは、親として見たくないの」
真剣な母の言葉に、胸がつまって涙が出そうになった。
ごめん、親不孝な息子で、本当に・・・
「おばちゃん、青がオレを捨てない限り、オレは一緒にいるつもりだよ。逆に、オレを捨てんなって言ってやってよ」
「ふふっ。ほんと、涼太くんはかわいいわね。青にはもったいないわ。・・・ありがとう」
空気を読まない涼太の言葉に、母の表情も涙腺も緩む。
「ちょっと待ってて」
そう言って、リビングを出て行く母。
が、すぐに戻って来る。
「お父さん、青が一緒になりたいって人を連れてきたのよ!ほら!」
一緒にリビングに入って来たのは、まだパジャマ姿の父だった。
「親父、いたんだ・・・」
マズイ。親父にはまだ言う覚悟してなかったのに・・・
「おっちゃん、お久しぶりです。お邪魔してます」
涼太、何ふつーに挨拶してんだよ!
「涼太か?久しぶりだな。・・・で、どこに青の嫁がいるんだ?」
「オレです。ふつつかな嫁?ですけど、よろしくお願いします」
涼太は立ち上がり、父に向かって深々と頭を下げる。
ちょ・・・。ほんと空気読んで涼太・・・。
親父の顔が引きつってるから!
「おい、お前達ふざけてるのか?冗談にしちゃ・・・」
「おっちゃん!」
涼太は父の手を両手でぎゅっと握って、上目遣いで見上げる。
「オレ、男だし子供も産めない。でも、ちゃんと稼いで、青を幸せにするから。だから、いい?」
涼太のキラッキラの上目遣いに、父が怯む。
「やっぱ、・・・だめ?オレ、おっちゃんとおばちゃんの家族になれたらなって・・・」
涼太が悲しそうに肩を落としてみせる。
「・・・す、好きにしろ!もう子供じゃないんだ。自分たちで決めればいい!」
・・・親父が落ちた・・・。しかも、なに顔赤らめてんだよ。
まあ、俺の親父だもんな。好みが似てる可能性はあるからな・・・。
にしても、涼太・・・。いつの間にこんなスキル身に付けたんだよ!
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