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第176話 同じ屋根の下に 2

夜になり青が帰ってきて、オレはダイニングのテーブルに夕飯を並べる。 「どーいう組み合わせだよ」 テーブルの上には金目鯛の煮付けときんぴらごぼう、味噌汁、そしてミートパイ・・・。 「いや・・・お隣さんが、引越しの挨拶で持ってきてくれて・・・」 「生もの持ってくるか?フツー。でも美味いわ、コレ。涼太好きそうなやつだ。つーか、隣入ったんだな」 生もの・・・ではないだろ。日持ちはしないと思うけど。 「あー・・・うん」 「どんな人?」 「え!?」 どうしよ・・・。言ったら青、怒りそーだな・・・。 でも隠したらもっと酷いことに・・・。 「涼太?」 「え?」 「だから、どんな人だった?」 やっぱり隠しておけない。どうせ分かる事だし! 「・・・雄大さん」 「ぶはっ」 青が、食べていたミートパイを吹き出す。 「何やってんだよ!きったねーな!」 「わりー。・・・つーことは、これはあいつが持ってきたって事か?一瞬でも美味いなんて思った自分を殺してやりてぇ」 パイを持つ手をブルブル震わせる青。 「食いもんに罪はねーだろ。雄大さんが作ったわけじゃねーし」 「・・・まあな。でもとりあえず口直ししとこ。やっべ、くっそうめー、この煮付け」 青はパイを皿に置いて、俺が作った料理を口へ運ぶ。 「・・・青、平気?」 怒ってないのか? 「平気も何も、どうしようもねぇだろ」 「だよな」 「俺よりも涼太だろ。お前さえ気をつけてればいいだけなんだから」 「う・・・、わかってるよ!」 「部屋に押し入られないようにしろよ」 「・・・ハイ」 一回入れちゃってんだけど・・・ 別に後ろめたくはないけど、黙っておこう。 「じゃあ、食わして。はい、あーん」 青は口を開けて、皿にのったパイを指さす。 「はぁ」 なにやってんだ、と思いながら、皿の上のパイをひと口大に切り、フォークに指して青の口に入れる。 「涼太も口開けろよ。ホラ」 え~・・・ でも、大人しく従った方がいいな。怒ってないとはいえ、きっと面白くは無いはずだから。 口を開けると、向かいに座っていた青が立ち上がり、自分の口にパイを咥えた。 「は?」 食わしてくれるんじゃねーの!? 呆気に取られているオレの口に、青の咥えたままのパイが押し込まれる。 「っ!・・・・・・普通に食わせろよ、恥ずかしい」 「ふっ、佐々木も自分が持ってきた食いもんを、俺らがこうやって食ってるって知らねーだろうな」 何故か満足気な青。 ・・・こういうとこ、ガキっぽいよな。 「隣に越してきたこと、ぜってー後悔させてやる」 ふっふっふっと、何かを企んでいる様子で笑う青に、若干の不安を抱いてしまう。 先に風呂に入った俺は、涼太が風呂に入っている間に近くのコンビニから酒を買ってきた。 「家で酒飲むなんてどーした?仕事でなんかやらかした?」 風呂から上がった涼太は、俺の飲んでいるビールを見る。 「俺がやらかすわけないだろ。明日休みだから飲んでるだけ。涼太もなんか飲む?風呂入ってる間に適当に買ってきた」 「そーなんだ。じゃあ飲むわ」 冷蔵庫を開けて缶チューハイとグラスを持ってきた涼太が俺の隣に座った。 ふわっとシャンプーのにおいがして、風呂上がりのしっとりした涼太の横顔に欲情してしまう。 「涼太、いい匂い」 耳元に顔を寄せると 「は?おまえも一緒なシャンプー使ってんだろ」 と素っ気無い返事が返ってきて、涼太はグラスにチューハイを注ぐ。 「マジでお前色気無さすぎ」 「オレに色気求めんな」 ・・・クソかわいくねぇ。マジで泣かしてぇ! けど、もう少し飲ませてから・・・ 涼太も泣かせて、佐々木にもダメージ与えてやる・・・! 俺の企みを知らない涼太は、順調に酔っ払っていった。

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