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第186話 憂慮 2

どうしてもベッドで寝ると言ってきかない宮野を、渋々俺のベッドで寝かせることにして、俺は涼太のベッドで横になる。 一緒に寝ることがあるかも・・・と考えて、自分の部屋はダブルベッドにしたため、涼太のシングルサイズのベッドが窮屈に感じる。 あいつ、普段の態度はでかいくせに、寝てる時は毛布に包まって小さくなって、かなり省エネだよな・・・。クソ可愛すぎる。 厚めの毛布を丸めて力いっぱい抱きしめると、涼太の匂いがして、本人が居ないことが寂しくて切なくなってくる。 「こんな匂いだけじゃ全然足りねぇよ・・・」 前に、別れると言ってしばらく離れて、帰った時に涼太が俺のベッドに寝ていた事があった。 あの時、涼太は同じように想ってくれていたのだろうか。 いま、同じように、俺がいない事を「足りない」と感じていて欲しい。 「涼太ぁ」 ガチャ 「あのさあ、うるっさいんだけど、ブツブツブツブツ」 俺の部屋にいた宮野が不機嫌そうに涼太の部屋に入ってくる。 やべ。声に出てたのか、色々と・・・。 「まだ3日しか涼ちゃんと離れてないのに、もう欲求不満?」 「うるせえな。俺はどんだけ涼太と一緒にいても欲求不満なんだよ。タケルはそうでもないんだろうけどな」 呆れ顔の宮野にイラッとして、嫌味のひとつも言いたくなる。 「タケルくんが俺のカラダに飽きてるとでも言いたいわけ?」 「さあ?別にそんなつもりなかったけど?思い当たる節でもあったならわりーな」 「・・・今の、かなり頭きた・・・俺が飽きられるようなカラダしてんのか、試してみる?」 「はあ!?」 宮野がベッドに上がり、仰向けになっている俺の上に跨ってくる。 「欲求不満なんでしょ?相手してやるよ」 「いらねーよ!どけ!」 宮野を退けようと振った腕を掴まれて、ベッドに押し付けられてしまった。 意外にも強い宮野の腕力。俺と同じくらいの体格だから、当然といえば当然か。 「なーに?もしかして、セックス下手なの俺にバレるのが怖いとか?山田って真面目そうだから、ただ腰振るだけのサルみたいなセックスしてんじゃないの? 涼ちゃん、満足してんのかなぁ?」 下手、だと・・・? 佐々木といい宮野といい・・・。マジでムカつく。 「・・・・・・は。ふざけんな。ヤッてやりゃいいんだろ、ヤリチンから転職したクソビッチが。悦すぎて泣いても知らねえからな」 頭に血が上った俺は、宮野を引き倒し、掴んだ両手をベッドに抑え込む。 「俺はタケルくん専用のビッチだよ。お前こそ、涼ちゃんよりもイイって俺に縋るようになんなきゃいいけどな」 こいつ、マジで調子に乗んなよ。 宮野と睨み合いながら、顔を近付ける。 唇が触れ合いそうな距離まで詰め寄って・・・ 「「・・・・・・おえぇぇぇ・・・」」 同時にお互い顔を背けるように横を向いた。 やっぱ無理!煽られようが何しようが絶対無理! 宮野がベッドから下りて、俺は涼太の枕に顔を埋める。ああ~、俺が欲情するのはやっぱこの匂いだよな。 涼太以外の男なんて、気色悪いだけだ。 恐らく宮野も俺と同じようなことを思っているだろう。想う相手が違うだけで。 「マジ気持ち悪・・・。山田、サイアク。もう少しで事故るとこだった」 床に座って口に手を当てながら眉を顰める宮野。 「こっちのセリフだ。掠りでもしてたら死んでたぞ、あっぶねぇ。お前みてーなのとヤレるなんて、タケルの目も皮膚も腐ってんじゃねぇか」 目が合って、もう一度お互いに睨み合う。 「「おえ・・・」」 ふたり同時に嘔吐く。 「はあ、つまんない事やってないで寝よ。俺、結構デリケートなんだから、物音立てんなよ。独り言も禁止ね」 「泊めてもらってるくせに図々しいんだよ、てめーは」 宮野は涼太の寝室を出て、隣の俺の寝室に入っていった。 横になり、涼太の匂いのする毛布と枕に顔を押し当て、思いっきり息を吸う。 甘過ぎず、だけど脳が麻痺してしまいそうな官能的な涼太の匂い。 俺以外にもこの匂いを振り撒いてるなんて許せねぇ・・・。 やっぱり匂いだけじゃ満足できない。顔を見て、触って舐めて味わって、深くまで混ざり合いたい。今よりも・・・もっと深くまで。 誰も触れない涼太の奥の奥まで触りたい。 この欲にはきっと、終わりなんて無いんだ。 ・・・・・・にしても何やってたんだ、俺も宮野も。さっきの一部始終を思い出すとゾッとする。 ・・・・・・・・・・・・本気でキモかった。

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