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第192話 fall 2

それ以来、涼太は俺に懐くようになった。 朝の挨拶から始まって、宿題の丸写し(すぐに先生にバレて、ふたりで反省文を書かされたけど)、教室の移動・・・部活までの時間のほとんどを一緒に過ごした。 俺はバスケ部で、小さい頃から空手をしていた涼太は部活に入らず、近くの武道館へ通っていた。 でも、涼太はある日突然、ずっとやっていた空手を辞めて、しばらくして同じクラスのカズに誘われて水泳部に入った。 空手をやめた理由を聞くと、「飽きたから」と言って、それ以上詮索されたくなさそうだったので、俺もそれ以上は聞かなかった。 水泳部に入ったのは、後に分かる事となるコンプレックス其の壱を、なんとかしたかったため。 部活が休みの日にはカズや、俺と同じバスケ部の優也と4人で遊んだりした。 カズと優也の家は団地だったし、騒ぐことができなくて、集まるのは大抵 一軒家の俺の家か涼太の家。 ゲームしたり、宿題したり(俺の家だと涼太は宿題もせずに兄貴の部屋から勝手に持ってきたエロ本タイム)、クラスで誰が可愛いとかしょうもない話をしたり・・・ つるむようになって分かった涼太の事 ほとんど表情が変わらない。 めったに笑わない・・・くせに人見知りしない。 エロ本でテンションが上がる・・・のくせにほとんどオナニーしない。 女子にモテる・・・わりに姉がコワイせいで女が少し苦手。 嘘がつけない。ケンカが強い。怒らせると厄介。 活字を見ると眠くなる。やっぱりバカ。 日焼けしててもそんなに黒くない。 肉が大好物。どれだけ食べても太らない。 たま~に見せる笑顔がめちゃくちゃカワイイ。 睫毛が長い。いい匂いしかしない。 涼太と一緒にいてわかった自分の事 ついつい涼太を目で追ってしまう。 女子が涼太の事で騒いでると、面白くない。 たま~に見せる涼太の笑顔にドキッとしてしまう。 涼太が俺以外と話しているとイラッとしてしまう。 俺以外見なきゃいいのに、と思う。 つまり、俺は涼太に惹かれている。 なんでだ・・・。涼太なんて顔が綺麗なだけで、女っぽい所なんてひとつも無いのに。むしろ男だっつーの。 俺は、エロ本を見て勃つし抜ける。可愛いと思う女子だって少なからずいる。小学生の時の初恋だって女だし、男を好きだなんて思ったことなんか、ただの一度も無い。 だけど、自分のものにしたいなんて思ったのは、女も男も含めて、涼太しかいない。 どこで何をしててもいつでも、涼太が頭から離れない。どっかおかしくなった?一時の気の迷いかも・・・。男なんか好きになるなんてありえない。 そんな葛藤を抱えながら、中3になり修学旅行を迎える。 ホテルの大浴場で初めて涼太の裸を見た。前は隠していたから、後ろ姿だけだったけど・・・ 薄らと日焼けしている上半身と足に挟まれている、やけに白くて滑らかそうな涼太の臀部を見た時、思わず俺の大事な部分が反応してしまった。 あ、これ、マジなやつだ。涼太を好きなのは気の迷いなんかじゃない。 他のヤツの裸を見た途端、ソッコーで萎えた。 涼太に対して後ろめたい気持ちが大きくなっていく。 そんな時・・・ 「わたし、修学旅行中に小林くんに絶対告白する!」 同じクラスの女子が言っているのを、偶然聞いてしまった。 しかも結構カワイイ。 マズイ・・・。涼太はエロに興味しかない男だ。兄貴のエロ本を読み漁ってる涼太に彼女なんかできたら・・・。 「あ・・・のさ」 咄嗟にその女子に話しかけていた。 「涼太のこと好きなの?俺、涼太と仲良いし、協力しようか?」 相談にのるフリをして、涼太に隠れてその子にめいっぱい優しい言葉をかける。 修学旅行から帰る頃にはその子は、涼太ではなく俺を好きになっていた。もちろん、俺が付き合う訳もなく。 こんなに簡単に好きな相手が変わる女なんて、涼太に相応しくない。 俺が認めた相手じゃないと、涼太の隣は渡せない。 修学旅行が終わると、進路希望の提出があった。 涼太はレベルの低い公立校を希望していた。 俺は成績が良かったし、親は私立の進学校への受験を望んでいた。 でも、それを無視して涼太と同じ高校へ行くことを決めた。涼太と、離れたくない。 俺の選択は正解だった。 涼太に近付こうとする女は後を絶たなかった。それを知る度に、俺は相談にのるフリを繰り返す。 時には迫ってくる女だっていた。涼太以外には触りたくもないけど、キスくらいならしてやってもいい。目を閉じて、女を涼太に脳内変換してしまえば、それなりに優しくもできた。 高校生になってからは、俺自身に言い寄ってくる女も相手にしなければならなくなって・・・。正直ウンザリしていた。 が、だんだん涼太に近付く女は減っていった。 涼太が学校でも堂々とエロ本を読んでいたり、他校の生徒とケンカしたりで、女子は距離を置くようになっていた。 それだけじゃない。中学の頃よりも更に涼太の顔は綺麗になった。涼太の隣にいると、自分の方が劣っていると思い知らされるのを、女達はよく分かっていた。 涼太はまるで女っ気のない高校生活を送って行くことになった。

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