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第12話
「あっ…、やっ…、そんなに…擦ったら…!」
クビレをギュッと握って擦り、時々は親指で先端をいじり、もう片方の手が袋を揉んだり、根元を握ったり。陽さん…手つきが凄くいやらしい。普段はこんないやらしいことをしなさそうな人なのに。僕だけが知ってる、陽さんの本性なんだ。
「あはっ…、陽さ…んっ」
陽さんの指が、僕の尻の下に潜る。穴を探り当て、侵入する。
「ふぁっ…! そこ…、あっ…」
陽さんのペニスで広げられたそこは、指を難なく受け入れた。それどころか、僕の体は欲しがっている。奥まで――もっと奥まで!
陽さんが僕の腰を抱える。次に何が来るのか察して、僕は腰を浮かせた。アヌスに陽さんの先端が当たると同時に、僕は腰を下ろした。
「やっ…あ…、キツいっ…」
「無理するな…。ゆっくり息を吐いて、力が抜けてから腰を下ろせ」
一度入れて慣れているものの、ローション無しではつらいかも。でも、陽さんと繋がっていたくて、僕は深く陽さんを飲みこんだ。
「はっ…あ…」
お湯が時化みたいに大きくうねり、バスタブの外にこぼれていく。それほど僕は、激しく腰を上下させていた。お湯が熱いせいもあり、のぼせそうだ。
「も…出る…!」
一度射精したのに、またすぐに絶頂が来た。申し訳ないと思ったけど、お湯の中に発射してしまった。
射精したけど、僕の腰は止まらない。陽さんがまだイッてない。
「睦彦…凄く気持ちいいぞ」
うなじや背中にキスをして、陽さんの腰の動きが早まる。僕は体の後ろで陽さんの唇の感触を味わいながら、気絶しそうなほどのめまいがしていた。
「イクぞ…睦彦…、くっ…!」
ジャブン、ジャブンとお湯が大きなうねりを見せ、陽さんが全て僕の中に出すと、凪が訪れた。
「陽さん…僕…幸せ…」
「俺もだ、睦彦。もう離さない」
後ろから強く抱きしめて乳首をいじりながらうなじにキスをくれた。その刺激がなければ、僕は気を失っていただろうな…。
「馬鹿かお前は?! そんな状態で仕事なんかできるわけがないだろうっ!」
陽さん――元木課長は、デスクを拳で叩いた。怒鳴り声が頭に響く。めまいで倒れそうになり、デスクの前で僕は足を思い切り踏ん張る。けど、力が入らない…。
「はあ…。でも、納期が迫っているので…休めばご迷惑になるかと…」
「まともに動けない足手まといなお前が一人いたとして、何の戦力にもならん! おまけに風邪を誰かにうつしたら、それこそ迷惑だ!」
社会人のくせにその程度の判断もできないのかと、またデスクを叩いて元木課長が怒鳴る。
僕は朝から具合が悪く、熱っぽくて悪寒がして、咳も出る。どうやら風邪のようだ。これぐらいならデスクワークだし何とかなるかと思ったけど、昼前に熱がグンと上がった。
かくして僕は、元木課長に強制退社させられた。陽さんと恋人同士になっても、やっぱり僕は怒鳴られるんだ…。
帰ってからパジャマに着替え、すぐにベッドに横になった。…水が欲しい…。けど、起き上がる元気が無い…。
しばらく眠っていたら、鍵の開く音で目が覚めた。陽さんだ。合い鍵を渡してあるから。真っ直ぐに僕のベッドまで来てくれた。
「睦彦…具合はどうだ?」
「はあ…喉が乾きました」
陽さんはスーパーのビニール袋から、ペットボトルの水を出し、口移しで飲ませてくれた。
「食欲があるなら、うどんでも作ってやるぞ。寒気がするなら、葛湯もしてやる」
「葛湯…お願いします…」
陽さんは勝手知ったる、といったふうに台所に立ち、お湯を沸かしたり何やら始めた。ワンルームだから、ここから台所は見えるんだ。
葛湯なんて、子供のころにお母さんに作ってもらって以来だな――とうつらうつらしていたら、湯気の立つマグカップを持って、陽さんが枕元に座る。
「起きれるか?」
「はい…」
スプーンで葛湯をすくい、陽さんがフウフウ冷まして僕に飲ませてくれた。ほんのり甘くておいしい。体も温まる。
マグカップが空になるころには、体のつらさが少しマシになっていた。
「ありがとうございます…おいしかった…」
「よかった。少し眠るか?」
「今は…まだ…眠くないです」
本当はうとうとしそうだけど、陽さんがいてくれるんだから、眠るともったいない。
「眠くなくても、横になっていろ」
肩まで布団をかけてくれた陽さんが、隣で添い寝してくれた。
「風邪…移りますよ」
「平気だ。俺は普段から手洗いとうがいをきちんとしている」
僕は怠ってました…。
汗ばんだ髪を、陽さんは撫でてくれる。陽さんの頬が、僕の頬にぴったり合わさる。普段は温かいのに、陽さんの頬は冷たく感じる。また、熱が上がったのかな。
「全くお前は…心配かけ過ぎだぞ」
「ごめんなさい…」
「治ったら、お仕置きだからな」
お仕置きの言葉に、体温がまた上がった。陽さんのお仕置きは、エッチで恥ずかしいものだから。
僕はいつまでたっても、こうして陽さんに叱られてばかりなのかな。それでもいい。本当の陽さんは、こんなに優しいんだから。僕はずっと、叱られ続けたい。
――完――
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