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第11話
「俺、観たいホラーがあるんですよ。一緒に行きましょうよ」
「却下。もうイヤ」
「俺一人じゃ怖いですもん」
「それなら行くな」
関東の梅雨明けが発表された。今年は例年よりも遥かに遅く七月も終わりとなった。
颯太は暇さえあれば千尋の部屋に来る。狭い部屋に男二人が暑苦しくてしようがない、と思っていたところ、颯太から「一緒に住まないか」との提案があった。千尋は快諾した。颯太ともっと一緒にいたい。颯太を知りたい。楽しいことや嬉しいことをたくさん経験したい。欲張りな自分を少しは許せるようになった。
テレビの横の写真立ては今は二つになった。蒼大との旅行の写真。もうひとつは颯太とのこの部屋での写真。二つあっていいのだ、と教えてくれたのは颯太だ。それは千尋の心に凪をくれた。
これからも蒼大のことを思い出しながら生きていくのだろう。颯太と一緒に。
了
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前向きなエンディングでホッとしました。千尋の新しい恋に踏み出す事へのためらいや罪悪感、葛藤を包み込んでくれた颯太君の明るさが頼もしい終わり方だと思いました🎶 優しいお話、ありがとうございました🙆
ドンピロさん、コメントありがとうございます! 千尋と颯太の差を明確に出したかったので読み取っていただけてとても嬉しいです。 こうしてコメントいただけると、とても励みになります。どうもありがとうございました!