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初雪物語(白石×不二)
「なぁ不二、知っとる?」
二人でこっそり手を繋ぎながら歩いている時、ふと白石が問い掛けた。
「何が?」
「雨の最初の一粒が鼻のてっぺんに当たったら、いいことあるっちゅー話」
「小さい頃に、姉さんから聞いたよ」
「そか。でな、それにはもう一つ続きがあって、」
「……はぁ……」
「初雪の最初の一粒が鼻のてっぺんに当たったら、恋愛成就すんねんて」
そう言いながら、白石が天を見上げた。どんよりとグレーの雲が覆う不吉な空は、別の見方をすれば白が舞いそうでもあった。
「試してみーひん?」
「……まだ成就してないとでも?」
拗ねたような口調の不二に、思わず吹き出して白石は笑った。
「アホか、もっとラブラブになれますようにっちゅー話や」
「っ……ばか……」
「関西人に馬鹿は言ったらアカンって。な、もし雪が降ったら試さへん?」
「一人でやったら?」
出来るだけ冷たく返す不二。しかし、それは全て照れ隠しなのを白石は分かっていた。
「あーあ、はよ雪降らんかなー」
握った手に力を込めて、こっそり空を見上げた。
END
クリスマス2012。
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