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APPLE PIE(跡部×不二)

「さぁ、好きなものを食え」  一方的に屋敷に呼ばれ、食卓の主賓席に座らされた不二は、呼び出した本人である跡部の言葉に戸惑った。 「辛いものからアップルパイまで、お前が好きそうなものを集めた。好きなだけ食え」 「急に呼び出して何事かと思ったら、なんだいこれは」 「だから、好きなものを食えと言ってるんだ」  真正面の席で威張って再び言った跡部に、不二も再び溜め息を吐いて呆れた。 「君は一体、何がしたいんだい?」 「お祝いに決まってる。今年は閏日ではないから、今日にしたんだ」 「ボクの予定は聞かずに?」 「必要ないだろ、ああん?」 「……呆れた」  口では悪態を吐いた不二だったが、予定が無かったのも事実。部活の時間にチームメイトに祝って貰いはしたが、その後の時間に特に何かしようと言う話はなかった。そのまま帰宅しても、母親と姉が何かしら張り切る位だろう。結局、不二は折れて目の前のアップルパイに手を伸ばした。 「とりあえず、このアップルパイ位は食べてあげるよ。姉さんのお手製には適わないだろうけどね」 「そうか、まぁお前のだ。好きなだけ食え」 「言われなくても分かってるよ」  そこからは、無言の世界。傍らに控えている多数の、跡部お抱えのメイドや執事が不動で控えている中で、一心不乱にアップルパイを口に入れる不二、それを眺める跡部と言う、不思議な時間が流れた。 END 不二誕2013。

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