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1.引っ越し前夜
「すまんな、最後まで迷惑かけて」
「いいよ別に。
友達だろ」
福岡最後の夜。
引っ越しの手伝いにきてくれた友人の|清隆《きよたか》とふたりで、部屋呑み。
……まあ、ただ単に出掛けるのが面倒なのと、冷蔵庫の中身の、片付けのため。
テーブルの上にはチーズちくわの磯部揚げにもやしと豚バラのポン酢炒め、チーズポテトに残り野菜と豆腐のナゲット……しかもある調味料だけで数種のソース付き。
作ったのは清隆。
俺だったら、チーズとちくわと豆腐がそのまま並んでいるだけ状態なのにこの差。
さすが〝お嫁さんに欲しい男№1〟は伊達じゃない。
実際、さらさらの黒髪、結構でかい目、ぷるっぷるの唇。
肌も白く、首なんて簡単に折れちゃうんじゃないかってくらい細い。
本人は気にしているのか、
「絶対萌え袖が似合うから着てくれ!」
と同級生の男が差し出したパーカートレーナーをぺしっ、って思いっきり払い落としていたがな。
……いや、あれは、相手も眼鏡を曇らせた上に、鼻息も変に荒かったから断って正解だと思う。
とにかく。
そういう奴なので、俺としてはめっちゃ好みなのだ。
……いや、女だったら、って話。
女だったら百点満点、マジで嫁に欲しい。
しかし清隆はいかんせん、男なのだ。
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