1 / 3

1.引っ越し前夜

「すまんな、最後まで迷惑かけて」 「いいよ別に。 友達だろ」 福岡最後の夜。 引っ越しの手伝いにきてくれた友人の|清隆《きよたか》とふたりで、部屋呑み。 ……まあ、ただ単に出掛けるのが面倒なのと、冷蔵庫の中身の、片付けのため。 テーブルの上にはチーズちくわの磯部揚げにもやしと豚バラのポン酢炒め、チーズポテトに残り野菜と豆腐のナゲット……しかもある調味料だけで数種のソース付き。 作ったのは清隆。 俺だったら、チーズとちくわと豆腐がそのまま並んでいるだけ状態なのにこの差。 さすが〝お嫁さんに欲しい男№1〟は伊達じゃない。 実際、さらさらの黒髪、結構でかい目、ぷるっぷるの唇。 肌も白く、首なんて簡単に折れちゃうんじゃないかってくらい細い。 本人は気にしているのか、 「絶対萌え袖が似合うから着てくれ!」 と同級生の男が差し出したパーカートレーナーをぺしっ、って思いっきり払い落としていたがな。 ……いや、あれは、相手も眼鏡を曇らせた上に、鼻息も変に荒かったから断って正解だと思う。 とにかく。 そういう奴なので、俺としてはめっちゃ好みなのだ。 ……いや、女だったら、って話。 女だったら百点満点、マジで嫁に欲しい。 しかし清隆はいかんせん、男なのだ。

ともだちにシェアしよう!