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1.生徒に無理矢理……!?
文化祭にはしゃぐ生徒たちを見ながら、一昔前の僕もそうだったな、なんて苦笑い。
生物準備室に戻ってきて、今日は授業もないし、日頃こなせない雑用やりながらだらだら過ごすぞー、などと決心した途端。
「大変、青木先生!」
血相変えて生物準備室に飛び込んできた男子生徒に、はぁーっ、ため息。
あれだけ、文化祭といっても羽目をはずことがないようにと口を酸っぱくしていったのに、早速これだ。
まあ、高校生相手にそんなことを言うだけ無駄だっていうのはわかっているが。
「大変って、なにが起きたの?」
「えっ、あっ、とにかく大変なんだって!
早く来て!」
はぁーっ、要領を得ない生徒にため息しか出ない。
しぶしぶ重い腰を上げ、生徒に先導されて教室に向かった。
「それで、なにが大変……うわっ」
担任を受け持つクラスの、模擬店をやってる教室に行くと、いきなり裏に引っ張り込まれた。
二、三人で一杯になるスペースに、すでに三人の男子生徒。
いくら年下とはいえ、囲まれるとさすがに怖い。
「おとなしくしてください」
「は?」
カーテンを一枚隔てた向こうは、陽気に生徒や来客が話している。
なのにここは、異様な空気。
「話せばわかる。
ね、冷静に話をしよう」
「別に悪いようにはしませんから」
目の前に立つ男子生徒の手がネクタイに掛かり、後ろのふたりに肩を押さえられた。
「や、やめ……むぐっ」
大声を出そうとしたものの後ろの生徒から口を塞がれ、大きくずれた眼鏡に視界が歪む。
えっ、僕、こんなところで生徒に……!?
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