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第1話

 雷が鳴ると、梅雨が明ける。そんな話を、どこかで聞いた気がした。  梅雨に入り、何日経ったか……数えてないから憶えてないけど、結構経った気がするある日曜日。学校が休みなので、部活に入っていない俺は幼馴染の家に居る。 「出雲(いづも)~、一瞬だけテレビ貸して~」  日向(ひなた)出雲は、幼稚園の頃からずっと一緒にいる幼馴染であり、親友だ。  仲良くなったきっかけは凄くシンプル。  俺の名前が陽向(ひなた)(てる)で、子供ながらに全く知らない他人と、同じ響きの苗字だったのが気になった。  実は兄弟? 家族だったり? そう思った俺は、人見知りなんて生まれてこの方したことも無いので、すぐ出雲に声を掛けたのだ。  幼稚園に入って最初に喋ったのが出雲だったこともあり、高校生になった今もこうして一緒に遊ぶ程の親友でいる。  日向家には今、出雲しかいない。出雲はリビングにある大きなテレビでゲームをしていて、俺はリビングのソファで横になっている。  出雲は床に座りながらカチャカチャとゲームのコントローラを操作しつつ、俺に返事をした。 「この状況で?」  テレビを使ってゲームをしている出雲から、テレビを借りることなんかできるわけない。出雲の反応は当然のものだ。  それでも俺はソファから起き上がり、テーブルの上にあるリモコンを取ろうとする。 「録画したい番組あるから、出雲の家で録画させて~」 「何故今」 「忘れないうちに~」 「断固拒否」  出雲は一瞬だけコントローラから右手を離し、リモコンを掴む。  あぐらをかいている自身の股に突き刺すと、そのままゲームを続行した。 「いいじゃんかちょっとくらい!」 「その『ちょっと』で僕は死ぬ」 「一時停止とかできるだろ!」 「お前が停まれ」  素っ気無く返事をする出雲は、視線をテレビから外さない。  恨めし気に出雲を睨むも、気付いていないのか何の反応も返ってこなかった。  仕方なく、もう一度ソファに寝転がり、出雲の後ろ姿を眺める。

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