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第10話(了)

 出雲は俺から視線を逸らさず、真っ直ぐに目を見つめたまま話す。 「僕……照と一緒に居ると、楽しいよ」 「でも、さっき……ッ」 「だから、さっきので察して欲しいんだけど」  出雲の表情が、真剣なものから変わった。  少し照れくさそうな、ムッとしたような表情をしている。 「照は、ゲームとかしないけど……でも、一緒に居て……楽しい」  俺の肩に置かれた出雲の手が、小さく震えた。  どんどん恥ずかしそうにしていく出雲の表情から、目を逸らせない。 「照は、僕の……特別、なんだけど」  声が、少しずつ小さくなる。  聞き間違いかと疑いたくなる程小さな声だったけど、確かに聞こえた。 「……出雲、それって――」 「本当、照って馬鹿だし鈍いし馬鹿」 「えっ」  何故か、二回も『馬鹿』と言われてしまう。  今度は俺が目を丸くしていると、出雲が恥ずかしそうに視線を逸らす。 「特別じゃなきゃ……わざわざ、家に呼んだりするわけないだろ」  休みの日も毎日一緒に居たから、知っている。出雲は、俺以外の誰かを家に呼んだり、部屋に招いたりしない。  だからこそ……出雲の言葉が、すんなりと胸に届いた。 「……い、づも……俺……ッ」 「何、馬鹿」 「うっ、ひどいぃ……ッ」 「うわっ、更に泣くなって!」  出雲の指が、俺の目元を乱暴に拭う。  痛いくらいだけど、全然嫌じゃない。  ――むしろ……。  目元を拭っていた指が、頬に添えられた。 「照、目……閉じて」  出雲の声に、ビックリして目を見開きそうになる。  それでも俺は、言われた通り……ギュッと目を閉じた。  部屋の中には、雨音だけ。  出雲の手が少しだけ動き、そして……温かいものが、触れる。  ――口の端に。  思わず目を開けると、出雲が眉間にシワを寄せていた。 「意外と、難しいな……」  そう呟いた出雲に、俺は思わず吹き出してしまう。 「ぷっ……はははっ!」 「何笑ってるんだよ、馬鹿」 「だって出雲……ふふっ、キス下手かよって~!」 「何だと、この馬鹿……!」  出雲が両手で力強く、俺の頬を挟み込む。  それによって唇が勝手に突き出され、タコのようだ。 「次は外さない」 「ん~っ!」 「動くなっ」  固定された俺の顔に、もう一度出雲の顔が近付く。  突き出した唇に、出雲の唇がチョンとぶつかる。その感触が可笑しくて、もう一度吹き出してしまった。 「ぷふーっ!」 「笑うなって――あっ」  突然、パソコンから起動音が聞こえだす。  停電が直ったんだと分かった出雲は、素早く立ち上がった。 「電気付けたら、もう一回リベンジするから」 「ゲーム?」 「本当、照って馬鹿だな」  立ち上がって、出雲は部屋に明かりを付ける。 「まぁ、そういうところがいいんだけどさ」  そう言って笑った出雲は、どんな明かりよりも眩しく見えた。

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