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第9話
俯きながら泣きじゃくる俺を、出雲はどう思っているんだろう。
するとまた、出雲の手が動いた。
「……僕は、ゲームを好きじゃない奴と一緒に居ても……楽しくない」
出雲の言葉が、拒絶のように聞こえる。
――出雲は、俺の気持ちに気付いたんだ。
それはそうだろう。急に近付いただけで顔を赤くして、手を伸ばされたら過剰に反応して、パニックになっているんだ。普通の親友が取る行動とは、思えない。
いくらゲームにしか興味が無い出雲でも、そこまで鈍くないだろう。
付き合えるなんて思っていなかったけど、実際に振られると……胸が痛くて、仕方ない。
涙が更に溢れてくる。
「ごめん、ごめん……ッ」
好きになって、親友のフリを続けて……俺は、最低だ。
それなのに、出雲は俺の頭から手を離さない。
その優しさが、尚更辛く感じる。
「俺、ちゃんと……出雲と、親友になるから……だから、ごめん……ッ!」
「は?」
出雲の声に、ピクリと肩が跳ねた。
「え……何で、え?」
出雲は何故か、困惑している様子だ。
頭に置かれていた手が離れたかと思うと、突然……両肩を掴まれた。
「照、一つ訊きたいんだけど……」
「な、なに……っ?」
「……僕のこと、好き?」
「ッ!」
真っ直ぐに目を見つめられて、逸らせない。
バレたかと思ったけど、早とちりだった?
もしもそうだとしたら……さっきの発言は、完全に失言だ。
誤魔化さないとと考えるも、出雲の目がそれを許さない。
ジッと見つめられて、心の奥底まで見透かされているような感覚に……俺は、素直に頷くことしかできなかった。
「……す、き……っ」
蚊の鳴くような俺の声はすぐに消え、部屋の中には外から聞こえる雨音だけが響く。
――終わった。
呟くと同時に、頭がそう言う。
親友になんか、もうなれないんじゃないか。
もう、話してもくれないだろう。
けれど……出雲の反応は、予想外のものだった。
「じゃあ何で、親友なの?」
「…………え……?」
出雲の言っている意味が、分からない。
さっき、出雲は俺を振った筈だ。
それなのに……どうして、こんなに真剣な目で俺を見ているんだろう。
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