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6話

 朝まで降っていた雨は、嘘のように晴れていた。嘉哉の庭のアジサイは生命力に満ち溢れ、空は突き抜けるほど青い。  梅雨の間は外出しなくても、家の中から楽しめるようにと彼が作り上げた庭は、思い出が詰まり過ぎて、目に刺さる。  庭師と作り上げた色とりどりのアジサイが咲き誇る庭は、日を追うごとに鮮やかに咲き誇り、色を変化させている種類もある。庭いじりを手伝っているときによく「この青いアジサイは、光の虹彩の色みたいだ」と言っていた。 『潤、俺がいなくなったら光を頼む。光はなあ、潤に長い片想いをしてるんだから、幸せにしなかったら、赦さないからな』 『嘉哉さんは嫉妬しないんですか?』 『光の話を聞いて覚悟はできていたから、気にすんな』  それは、離婚をし光を養子にした時か、あるいはそれ以前の話か。 『光さんを一生大切にします』 『それでいい』  その言葉が脳裏によぎった。  色が変わるアジサイの花言葉には、浮気と辛抱強い愛情、そして傲慢と言う意味がある。前者はパートナーによって色を変える光に、後者は嘉哉に、最後の意味は知らないフリをして居座り続けた自分にピッタリな意味である。  それぞれの花を咲かせ――恋をしていたのだ。 「潤、何してるの?」  白い襦袢を着た光が左隣にやってきて、身体を寄せた。鮮やかな青が穏やかに、満足げに細めている。 「嘉哉さんのことを思い出してました」  光の左手をつかむ。 「光さん、結婚してください。ずっと傍にいたいです」 「待ちくたびれたよ。ずっと潤の傍にいたい。特別な存在になりたいと思ってた」  ぎゅっと抱きしめられ、それ以上の力で抱きしめた。これからはずっと離さないとでも言うように。 「結婚指輪は、重ねづけできるものにしましょう。嘉哉さんと私がいるしるしをあなたに」  サファイアよりも高貴できらめいている瞳から、一筋の涙がこぼれ、誓いのキスを交わした。

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