2 / 2
第2話
季節は秋になろうとしていた。この城に来て三ヶ月になる。この城の暮らしも慣れてきた。
「また王子様! 王子様が畑仕事等!!」
慌てた様子のメイドに止められるが、危険な森を抜ける事など用意では無く、自給自足をしなければならない。自分はまだ森に獣を取りに行ける力はなく、畑仕事ぐらいしか出来ないのだ。
「畑仕事は力もつく。僕がやりたくてやっている事だ。君は君の仕事を頼む」
「しかし王子、お勉強も御座いますし、剣術のお稽古も為さらないと」
「ちゃんと時間には戻る」
「あまりご無理はなさらないで下さいね?」
「逆に畑仕事は気晴らしなんだ」
心配そうなメイドに笑いかけて見せる。メイドは「そうですか?」と、まだ心配そうな声を出すが「では、私は洗濯物でも」と、その場を離れて行った。
畑仕事が気晴らしなのは嘘では無い。身体を動かす事は気持ちが良かった。
「精が出ますね」
そう声をかけられ振り向くと執事が戻って来た様だ。
「おかえり」
一旦作業を止めて駆け寄る。
執事は唯一の男手であり、これまた兵士をも負かす屈強な男である。
「今日も凄いな」
大きな豚を捕まえてくれた様だ。
「もう一度行って魚を取って来ようと思います」
「お前が居てくれて助かるよ」
「滅相もございません。王子」
執事は頭を下げると豚を厨房に持っていく様だ。僕も頑張らなければ。
今日取れた野菜はサツマイモだ。
剣術の稽古を終えて自室に戻り机に向かう。読書タイムだ。
僕は本を読むのが好きなのだ。幸いこの城の図書室には要らなくなった本をが沢山保存されていた。逆に言えば滅多に読める事のない珍しい本等も有り、面白かった。
コンコン
窓を叩く音。またアイツか……
カーテンを開け、窓を開けると吸血鬼を招き入れた。
吸血鬼は招かれなければ部屋に入れないと言うのだ。
「何の用だ。僕は本を読むのに忙しいのだが」
「折角退屈してるだろうと来てやったのにその言い種は何だ」
「聞こえなかったのか? 僕は本を読むのに忙しいんだ」
「根暗だな」
「どうとでも言え」
こうたまに喧嘩を売りに来るのだ。
吸血鬼は暇人なのだろう
僕も入れなければ良いのだが、窓越しにこんなやり取りをしてる所を誰かに見られたら困る。
「そういえばお前の名前を聞いてなかったと思ってな」
「今更か」
「名前を教えろ」
「名を聞くならばそちらが先に名乗るのが礼儀だろう」
「それもそうだな」
吸血鬼はゴフォンと咳払いをする。
「私の名前はギルだ」
「随分物騒な名前だな」
「何処がだ」
「キル(殺す)だろ?」
「ギルだ! キに濁点を忘れるな!」
「ギルか。紛らわしいな」
「耳垢でも詰まってるんじゃないか」
「メイドに掃除して貰ったばかりなんだ。お前の滑舌の問題だろう」
「何だと!」
「何でも無い」
この吸血鬼は涼し気な顔をしているが
、どうも直ぐに熱くなるタイプらしくてついつい構ってしまうのだ。
僕はついクスクスと笑って吸血鬼をより怒らせてしまう。
「おい、名乗ったのだからお前も名乗れよ!」
「名乗る程の名前じゃ無いんだが」
と、言うか。一応元王の子供であるし名前ぐらい解りそうな物だ。
まぁ、良いか。
「リオだ」
「リオ」
「ああ」
ギルは僕の名前を囁くと頷き開けた窓から出ていった。
何かに満足したらしい。
僕は窓を閉めて読書に集中する事にした。
ともだちにシェアしよう!

