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「……分かった」  松原が固い声音で言うと、小さく息を吐き出した。春夜の手から紙袋を渡すように促し、それを受け取った。急に軽くなった手の重さに、春夜の心が急激に冷え込んでいく。  そのまま帰るのかと思いきや、松原がキミヨの方に振り返る。 「抱けば良いんだな」 「えっ?」  春夜は驚いて、松原を凝視する。眉根を寄せている様子からして、無理して言っているようにしか見えない。 「……男は駄目なんじゃないのかい?」  キミヨも驚いているのか、目を見開いている。 「問題ない。案内してくれ」  松原はそう言って、財布から数枚の万札を取り出しキミヨに渡す。キミヨが「……でもお客さん」と眉を顰めたところで、春夜は「ご案内します」と言って松原を促した。  春夜が松原を二階に案内しようとすると、「先に君の部屋に行きたい」と言い出した。 「……あれは特例であって、お客さんは二階に案内しているんです」  線引をするように、春夜は固い口調で述べる。

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