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斉木は刺身定食、松原は鯖の味噌煮定食を頼むと、一杯だけと言ってビールを注文した。
「結局はビール飲んじゃうんだよな」
罪の意識に駆られているのか、斉木は苦笑いと共に運ばれてきたビールをもちあげた。軽くジョッキを合わせて、互いに喉を潤していく。
「まぁー、一杯ぐらいなら良いんじゃないのか。明日から休みだし、付き合いとかも少ないだろう」
松原はそう言って、小鉢に盛られたインゲンのお浸しに箸をつけた。甘いゴマの風味が口の中を満たしていく。お通しの段階で、すでに舌に合った。
「そうだな。一年間頑張ったもんな」
斉木がはぁーと深い溜息を吐き出すと、今度は「そういえば」と言って目を見開いた。
「意中の相手とはどうなったんだ? 松原から誘ってきた貴重な飲み会以来、続報がないんだけど」
「それが……なかなか難しい」
「難しいって……どういうことだ? 店には行ったのか?」
言い淀む松原に、斉木がじれったそうに眉を寄せた。
「行った。それに金魚も渡せたんだが……」
「金魚? またお前は魚かぁ!」
斉木が呆れたように、額に手を当てた。そこに頼んでいた定食が届き、味噌の香りが鼻孔をくすぐる。
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