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「お詫びにおせちを用意しておくから、良かったら来てくれないかと言われたんだ」 「えっ……」  キミヨが本当にそんなことを言っていたのだとしたら、何が目的なのか分からない。  客に対して、そんな特別扱いをしたことなど一度もなかった。 「……違うのか?」  春夜の様子を不審に思ったのか、松原が眉を顰める。 「ここでは客を傷つけない為に、そう言って帰すのが風習だったりするのか?」 「いえ……そういうわけでは……」  雪こそ降ってはいないが、外は日が沈むに連れて気温がどんどん下がっていた。玄関先での立ち話も、着流しだけだとさすがに堪える。裕介もさすがにこんな日まで来ないはずだ。それに松原には、もうここに来るべきではないときちんと伝えた方が良いようにも思える。 「どうぞ。こちらへ」  春夜はそう言って、松原を玄関へと導いた。「足下、気をつけてください」  自分一人だということもあって、電気はあまりつけていない。日が沈みつつある玄関先は、暗い影を落としていた。  薄暗い廊下を進みつつ、二階の客室に案内するべきか逡巡する。  でも、これから暖房をつけても暖まるのに時間がかかってしまうだろう。この寒い中、駅からここまで足を伸ばしたのだからさすがに酷だと、春夜は自分の部屋へと案内した。

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