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「元気そうだな」  春夜の部屋に入るなり、松原は真っ先に金魚鉢に近づいた。 「ええ。おかげさまで」 「餌はまだ足りてるか?」 「はい……」  金魚を見つめる松原の背を春夜は、落ち着かない気持ちで見つめる。 「君だけか?」 「えっ?」 「君一人だけなのか?」  松原が訝しげな表情で、春夜に振り返った。 「ええ……そうですけど」  誘った本人がいないのだから、不思議に思ったのだろう。キミヨは自分のことを語らないから、この正月誰と過ごしているのか分からない。長い間柄なのに、キミヨのことは何も知らなかった。 「そうか」  松原がそう言って、持ってきた紙袋から一本の一升瓶を取り出した。 「日本酒を持ってきた。飲めるか? 一応、飲みやすそうな甘口を選んだんだが」 「ええ。ありがとうございます」  春夜はおせちとグラスを取りに行くと言って、厨房へと向かった。  冷蔵庫から重箱を取り出すと、思いのほかずっしりとした重さがあり、キミヨが松原を誘ったのは間違いなさそうだった。

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