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「二人だけで食べるには、量が凄いな」
春夜が自分の分を取り分けると、松原がグラスを手に取った。
「確かにそうですね。僕も驚いています」
春夜がグラスを手に取ると、軽くぶつけ合い口をつける。
春夜はあまりお酒を飲まないので違いが明確には分からないが、持ってきてくれた日本酒は口当たりがあっさりしていて飲みやすかった。
「おいしいです」
素直に口にすると、松原がホッとしたように口元を緩めた。
「この煮物は君が作ったのか?」
皿に乗っている人参と椎茸を指しつつ、松原が言った。
「違いますよ」
「あの支配人か?」
「ええ、そうですよ。お気に召しましたか?」
「ああ。てっきり君が作ったのかと思った」
何故そう思ったのか分からず、春夜は首を傾げる。
「前に出してくれた小鉢の煮物と味が似てるから、そうなのかと思ったんだ」
「どうして僕が作ったって、分かったんですか?」
驚く春夜に、松原が困ったように口元を歪めた。
「いや……単なる勘だ。以前に君が俺の反応をやたらと気にしてたから、そうなのかと思ってただけだ」
恥ずかしさを誤魔化すように、春夜は日本酒を口にした。カッと喉に熱が帯びる。
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