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とんでもない年明けになってしまったと、春夜《しゅんや》は障子から漏れている白い光に溜息をついた。
除夜の鐘すら気づくことなく、松原に抱かれ続けた。
さすがに全身が重だるい。
一日に何人も相手にすることはあるが、連続して一人の相手にというのは初めてのことだった。
松原が起きる前にお風呂の準備をしておこうと、自分の腰に絡みつく男の腕から慎重に体をずらしていく。
「……どこに行くんだ」
背後から低い声。加えて腕の力が強まり、春夜を再び抱き込んでくる。
「お風呂の準備をしてきます」
「シャワーで良い」
「寒いのでお湯に浸かって、温まった方が良いですよ」
「いい。こうしてれば暖かい」
柔らかな感触が首筋にあたり、くすぐったさに身を竦める。
「新年早々、元気が良いんですね」
嫌み交じりに告げ、腰に当たっている熱から逃れようと無理矢理起き上がる。
布団から出ると、ひんやりとした空気が肌にまとわりついた。
決まり悪そうに俯いている松原を横目に、春夜は襦袢を胸元に手繰り寄せ、内風呂へと向かった。
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