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「今日のこと話したの?」
「言ってないから安心しな。客同士のもめ事に、他の客を巻き込むわけにはいかないだろう」
ホッと胸を撫で下ろす。松原には余計な心配をかけたくない。それに後ろめたかった。
「あんたが寝てる間に来て、あたしに話があるって言ってきたんだ」
変わった男だよと付け足し、キミヨが呆れた顔をした。
「キミヨさんに?」
「あんた、正月に言われたんじゃないのかい? 一緒に住まないかって」
「……言われた」
「それの許可を取りに来たって」
キミヨの話に呆気にとられる。わざわざそこまでする必要なんて本当はない。
「母親代わりの貴女には話しておいたほうがいいだろうって」
仏頂面で言うなり、キミヨは立ち上がってしまう。
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