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1 ひとり言

 俺はお前が幸せならそれでいい。  そう、それでいいんだ──  好きになっても上手くいかず、たとえ相手から思われていても、それはお前が望む恋愛じゃなかった。沢山悩んで、頼れる人も失って……将来寄り添う相手もおらず、家族すら作れない。体だけで満足なんて、そんなの寂しい。お前はいつから恋が出来なくなったのだろうな。 『一生ひとりでいいんだ』  口癖のように溢していたお前が、やっと見つけた運命の相手。長年お前を見てたけど、あんな顔して笑えるなんて俺は知らなかったよ。  よかったな。本当に……    本当に?    なんで俺はあの日から時間が止まってるように感じているのだろう。よく「心にぽっかり穴があいたよう」なんて言われるけど、それは本当だった。  俺の心には、本当にぽっかり穴があいている。  笑っちゃうよ。  なんで穴、あいてんだろうな──  毎日起きると自問自答している自分がいる。  お前が幸せなら俺は嬉しい。  嬉しい?  あぁ……嬉しいよ。  だって、あんな寂しいこと言うお前、俺は見たくなかったんだよ。  本気で人を好きになれてよかったじゃん。  よかったな。  嬉しいはずなのにな……  なんだろう、この気持ちは。  ずっと気にかけてきて、これでやっと肩の荷がおりた。  肩の荷が、とうとうおりてしまった。何も無くなってしまった。  それでも嬉しそうに、幸せそうに、俺に会いに来てくれる姿を見ると本当に俺も幸せな気持ちになるんだ。  これは強がりではなく本当のこと。  だから時折現れるこんな寂しい気持は、時間が解決してくれるはず。もう一年以上も時間は経過してるけど、そのうち薄れていくはずなんだ。  そう、今だけだよね? きっと「あんな時もあったよね」と、笑って振り返る事が出来るはず。  ごめんな── 「お前が幸せなら俺は嬉しい」なんて言っておきながら、心の中ではこんな風に思ってしまう。でももう少しすればきっと心から祝福できると思うから。  まだもう少しだけ、嘘……つかせてな。

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