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18 休日デート
普段の日曜日なら午前中はダラダラと寝て過ごす。
でも今日は違う──
倒れた俺を助けてくれたお礼のデートの日。純平君は昼前に迎えに来てくれるらしいのだけど、正確な時間を決めたわけじゃないし連絡先の交換をしてないから俺はいつ来られてもいいように早目に支度をした。純平君が来たら、ちゃんと連絡先を交換しておこう。
ちょうど十時半を回った頃インターホンが鳴り、俺はそのまま純平君が待つエントランスへと急いだ。
「あ……車なんだね」
てっきり徒歩か電車での移動かと思っていたからちょっと意外だった。
「先輩から借りたんです。俺は車持ってないから」
「運転は慣れてる……のかな?」
純平君の自信なさげな言い方に、ちょっと心配になってしまい思わず聞いてしまった。不安に思っていることがわかってしまったらしく、俺を見てクスクスと笑う。
「大丈夫ですよ。俺、よく運転手に使われてますんで」
なるほど。友達にいいように使われている純平君の姿が目に浮かんだ。人がいいというか、強く言えなさそうというか……そういう所も純平君のいいところだとは思うけど。
喋りながら、さりげなく助手席のドアを開けてくれる純平君を見て、なんかいいな、と嬉しくなった。
「ありがとう」
俺は助手席に乗り込み、ドライブデートが始まった。
慣れてると言っていただけあって、運転は上手だった。純平君の運転は安全運転そのものだ。
「今日はデートらしく映画に行ったりショッピングしたり……って色々と考えたんですよ。でも、悠さんせっかくのお休みだし、ゆっくりしたいでしょ? だからね、ドライブにしたんです。のんびりしましょう」
純平君は前を向いて運転をしながら、楽しそうにそう話す。
「ねえ、俺からのお礼なんだよね? 純平君、俺のためになんか色々と考えてくれて……なんだか俺がお礼されてるみたいだね」
この状況を考えれば考えるほど、俺が純平君によくしてもらってばかりで、お礼になってないような気がしてしょうがなかった。
「そんな事ないです。 俺のしたかった事だから。お礼だって言えば……その……悠さんとデートできると思ったから」
チラッと俺を見て、赤い顔をしてそんな事を言う。
なんでそんな顔をするのだろう。嬉しいはずの純平君からの好意も、俺は段々と素直に受け止める事が出来なくなっていた。
「純平君って、面白いね。とりあえずさ、お昼は俺に奢らせてね」
「はい! 嬉しいな」
少し車を走らせて、お昼はここで食べたいと言う純平君について来てみれば、そこは全国あちこちにある牛丼のチェーン店だった。
「俺が奢るって言ったよね?……何? 俺ってそんなにお金持ってなさそう?」
少し不満に思い、わざと意地悪く言ってみると、慌てて純平君が否定した。
「違いますって! そんなんじゃなくて……俺好きなんです。牛丼。悠さんは嫌いですか? ね……入りましょう」
「ん、好きでも嫌いでもないかな。まぁ純平君が食べたいんなら、いいよ、ここで」
好物だから一緒に楽しみたい、そう言ってこの店にしたのだと笑顔を見せられ、嫌いも何もこの店に入ったことのない俺は、戸惑いながら純平君に続き店に入った。
ニ人並んでカウンターに座り、牛丼を食べる。俺は並盛り、純平君は大盛り。初めて食べたけど、美味かった。
「……美味しいですか? よく考えたら悠さんってこういう所来ないですよね?」
すっかり食べ終わってから恐る恐る俺の顔を伺う純平君に笑ってしまう。
「なに? 美味しいよ。安いし早いし、たまにはいいよね、こういうのもさ」
そう答えると、純平君は嬉しそうにはにかんで笑った。
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