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26 訪問者
久々に夢を見た──
きっとあれは高校時代。
今より少しだけ若い陸也が離れたところで俺に笑いかけてる。でも俺は、陸也が笑えば笑うほど、堪え切れない涙を溢す。
涙は溢れるのに、なんで涙が溢れるのかが俺にはわからない。
無感情……
ぼんやりしていると、誰かに背中を押されるんだ。押された拍子に体がフワッとなり驚いて飛び起きる。
「またかよ……寝覚め悪いな」
目を覚ました俺は一人呟く。怠い体をのそりと起こし、ベッドから出てリビングへと向かった。冷蔵庫の中のミネラルウォーターを取り出し、ひと口飲んでソファに腰掛け今日のこれからを考えた。
今日は店の時間までのんびり過ごそう。
変に昨晩飲み過ぎてしまって軽く二日酔い……
ああ、頭が痛い。
しばらくの間ニュースを眺め、シャワーを浴びる。シャワーを浴びてサッパリしたら、また横になりたくなってしまった。まだ時間もたっぷりあるし、買い物は店に出てから元揮君にでも頼んで頃合い見て済ませばいいか。そう思い俺はまた寝室に向かった。ベッドに潜り込み微睡んでいると、インターホンがピンポンと鳴る。
一度目は無視……
平日の真昼間、どうせ何かの勧誘だろう。
ニ度目、三度目と鳴り続けたので諦めて出てみると、そこには笑顔の敦が立っていた。
「ちょっと、何その格好……もしかしてまだ寝てた?」
玄関に来るなり、俺の格好をあぁだこうだ言いながら部屋に入ってくる敦の腕を掴む。
「何しに来たんだよ? 勝手に入るな……」
ズカズカと入ってくる敦は俺の手を軽々と振り払った。
「お前仕事じゃないのかよ。何しに来たんだ?」
思ってもみない訪問者に一気に目が覚めたようだった。
無遠慮にソファにどすんと腰を下ろし、足を投げ出すようにだらしなく座る敦をひと睨みする。
「ん? 今は休憩中。空き時間……悠さんどうしてっかなぁって思って、近くだったから来ちゃった」
来ちゃった、なんてかわいらしく言ったところで苛立ちしかない。
「大丈夫? また寂しくなってたんだろ?」
「……別に 」
ほら。やっぱり苦手だ……何を言われるのか怖かった。敦の視線が居心地悪く、どうしても俺は目をそらしてしまう。
「何か飲む? 俺、まだ少し寝たいんだけど。何か飲むなら勝手に冷蔵庫から出して飲んでて……で、早く出ていけ」
俺は大して喉も渇いていなかったけど、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しひと口飲んだ。そのまま逃げるように寝室へ入ると、ベッドに腰掛ける。
「………… 」
なんで敦は俺に構うんだ?
ベッドに横になろうとふと視線を入口へ向けると、ドアの前で敦が佇んでいた。
「悠さん……純平君はダメだよ。やめときな」
また射抜くような視線を俺に向けて敦が言う。でも言っている意味が俺には理解できなかった。
「聞いてる? 純平君じゃ、悠さんを幸せにはできないからね……やめときな」
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