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27 陸也と志音……と俺

「別に純平君とはそんなんじゃないから!……何か勘違いしてない?」  部屋の外で立つ敦は、ムキになってしまった俺を見てクスッと笑った。 「そう? 悠さんあいつに惹かれ始めてんのかな、なんて思ったからさ。俺の勘違いならいいけど……じゃあそろそろ行くね」  いつの間にか目の前まで来ていた敦は、俺の頭にポンと手を置き、優しい笑顔を向けてから帰って行った。 「なんなんだよ……」  敦が手を置いていた頭頂部に自分も手を添える。いちいち触るな。そう思うのに、胸の奥がキュッとした。  敦との最初の出会い──  今からニ年ほど前か、陸也と志音が付き合う直前くらい。敦は俺の店の前で志音とキスをしていた。  きっと志音のことが好きだったんだろう。でもその時はすでに志音も陸也もお互いの事を意識していた。  程なくして志音と陸也が付き合い始め、俺は陸也の事を知っていたからこそ「よかったな」と祝福をした。陸也も志音も以前と変わらず店に来てくれ、志音に至っては俺に恋愛相談をするくらい親しく接してくれた。  高校生らしい可愛い恋の悩み──  陸也だって同じだった。ニ人とも見た目とは裏腹に、お互い初めての真剣な交際だったから。俺は微笑ましく二人を見ていた。ニ人ともお互いをとても大事に思い、愛してるのが伝わった。  羨ましい……  俺は人を愛し、愛された経験がない。正直、祝福している顔をして羨む気持ちも渦巻いていた。  ある時志音に俺と陸也の過去の関係を知られてしまい、問い詰められた。「悠さんは陸也さんの事好きだったんだろ?」そう言われ気持ちが揺らぐ。図星を指され、思わず抑えていた感情を爆発させてしまった。  だったらどうなんだ? だからと言って何かが変わるのか?    少し酒も入っていたせいか、ポロっと零した途端に次から次へ溢れ出してしまった。どうしようもない事を志音にぶつけてしまい自己嫌悪に陥った。すぐさまいつものように笑顔で誤魔化し「意地悪言ってごめんな」と志音に詫びた。  零してしまった感情を、また拾い集めてしまい込む。  感情を隠すのは得意だ。  嘘をついたり隠したり……  自分が人とは違うと気づいてから、今迄ずっとこうやって生きてきたんだ。でも、陸也と再会してからは不安定。それは自分でもわかってた。  寂しいんだ。  取り残された感じがして孤独感に押し寄せられる。  でも、そんな感情も月日が経てば薄れていった。

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