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63 純平の心

 俺はどうしたいんだ?  目の前には酔っ払って、ソファに横たわりスヤスヤと寝ている悠さんの姿があった。  今から数時間前──  久しぶりに悠さんから連絡が来て、俺は少し浮かれて悠さんのマンションに来た。  今日はニ人で家飲み。部屋に入ると悠さんは簡単な食事も用意してくれていた。ニ人でこうやってお店以外で会うのが久しぶりでなんだか嬉しくて、俺は他愛ない話を沢山した。  悠さんは初めて会った時よりも自然……というか、打ち解けてくれている感じで、少しづつ距離が縮まったみたいで嬉しかった。  いつもよりお酒のペースが早いかな? なんて軽く考えてたんだけど、きっと悠さんも酔っ払ってたのだろう。  あまり顔に出ないから、全くわからなかった。じゃないとあんな風な悠さん、おかしいよね……  だいぶお酒も進んできたころ、悠さんが俺に聞くんだ。 「あの彼女とはうまくいってるの?」 「………… 」  胸がドキッとした。  だって、そう言う悠さんの表情が凄く辛そうに見えたから。こういう会話は何気ない感じでするものなんだ。でも明るい声でそう聞いてきた悠さんの表情は真逆に見えた。  実際、里佳と会うようになって「やり直そう」と言われていたから、見透かされているようでドキッとしてしまった。  俺が返事をするタイミングが遅くなったからか、悠さんは慌てて自分の言ったことを否定した。 「あ、ごめんごめん、今の無し! 余計なお世話だよね。ごめんな、気にしないで……」  正直俺は里佳とやり直してもいいとも思っていた。でも、そうすると悠さんとはあまり会えなくなる。  ……ていうか、違う。  里佳より悠さんの方がどうしても気になってしまうんだ。  一年前のあの日、泣いている悠さんを見て、今こうして再会をした。あの時の涙が気になって気になって、悠さんの事が気になって……  恋心?  自分のそんな気持ちもよくわからないまま、心を開いてくれない悠さんに俺は「好きだ」と伝えてしまった。 (俺ね……純平君友達だから言っておくけどさ、ゲイなんだ。だからさ、あんまり軽率なこと言わない方がいいよ。俺勘違いしちゃうから……)  あの時そう言って、悠さんは自分がゲイだと俺に告白してくれた。  それなら悠さんも俺の事を好きになってくれるかもしれない、なんて俺は軽く考えてしまっていた。自分がどういう意味で好きだって言ってるのかすら、よくわかってないくせにさ。  今考えると本当、俺は自分本位で勝手な事を言っていた。  敦さんと悠さんの仲に嫉妬して、悠さんを独り占めしたくて……  それなのに……  俺はなにがしたいんだろう。 「好き」なんだけど、きっと俺は悠さんを傷付けたんだ……

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