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65 根本的なところ

 俺から体が離れていく悠さんの肩をギュッと抱き寄せた。 「なんでそんな事言うんですか……俺、前にも言いました。好きだって言った。なんで俺の気持ち否定すんの? ねえ、俺の方見てください!」  外方を向く悠さんに向かって、俺は少しムキになって捲したてる。  なんだか感情的になってきてしまい止められなかった。 「ねぇ! 悠さっ…… 」  パッと振り返った悠さんの顔が、思いの外近くてドキッとする。 「俺の事、本当に好きなの?……俺の事……抱ける?……キス、できる?」 「え…… 」  真っすぐ見つめられ、思わず言葉が詰まってしまう。  悠さんの手が俺の頬にそっと触れる。ゆっくりとそのまま俺に体重をかけてくる悠さんに、俺はどうしていいのかわからずアホみたいに「え? え?」と声を出す。 「俺の事好きなんでしょう?……いいよ、抱いてよ。純平君の好きにしていいよ」  頬を紅潮させた悠さんが目を潤ませて、俺の事を押さえつけ見下ろしていた。 「え……と、悠さん……俺…… 」  多分俺、少し勃ってる。  キスくらいできると思う……  でも、悠さんの事好きだけど、体が触れてドキッとした事はあったけど、こういう事は今まで考えた事がなかった。 「………… 」 「ははっ……純平君、驚きすぎ」  突然悠さんが笑い出し、俺の胸を両手でポンと叩いた。 「悠さん…… 」  咄嗟にその手首を掴み、俺は悠さんの頭に手を回して引き寄せる。そして唇に触れるだけのキスをした。 ……だって悠さん、冗談っぽく笑いながら今にも泣きそうな顔をしてるんだ。  ドキドキと胸がうるさい。  でも俺のこの行為がまた悠さんの顔を強張らせてしまった。 「は? なんなの? 無理しなくていいよ……純平君は今の今までこんな事考えたこともなかったろ?」  図星を指されドキッとする。 「おちょくらないでよ。だから言ったでしょ? 違うんだよ……俺と純平君とは……」  俺から離れ、テーブルにあるワインをまた自分で注ぐと悠さんは一気にそれを呷る。 「俺はね、純平君が可愛い女の子を見てキスしたいな、触れたいな……エロいことしたいな、ってそう思うのと同じように、好きな男に対してそう思うの。それが普通なの。純平君は俺の事を好きって言ってくれた。でもこんな事は思わなかっただろ? まあ、独占したいな……くらいは思ってくれてたみたいだけど」  まるで俺の心の中を読んでいるかのようにツラツラと話す悠さんに、俺は何も反論できなかった。

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