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相1
陽射しが容赦をしない日中は汗と日焼けと熱中症が大敵だ。と思いながら車を玉砂利の駐車場へ停め、予定時間よりすこし早く着いたのを端末で確認しながら星虹診療所へと向かった。
「はよーございまーす」
「おはよ、ごはん食べるかい?」
表の診療所側ではなく、裏のスタッフ入り口になっているドアから声を掛ければひょっこりと顔を出し、微笑んで少し遅い朝食に誘う古坐魅に「いらない」と答えながらスリッパに履き替えて応接室に入る。
「……なんだ、まだ来てないのか」
苦手な男はまだのようだ。一息つくために外装とは不釣り合いな最新式のコーヒーメーカーのスイッチを入れる。
「藜ならもうすぐ来るよ。なんだか忙しそうだったけどね」
サンドイッチを食べながら北洛の呟きに古坐魅が答える。
「……忙しいなら来ないんじゃないのか?」
「来るって言ってたから。それに本業の方じゃないみたいなんだよね」
淹れたてのコーヒーをお互いの前に置けば「ありがとう」といいながら一口飲んで微笑んだ。
「安楽椅子探偵だからね。俺の甥っ子は」
目を細めてにんまり笑う古坐魅に似て非になる甥っ子のすべてを見透かしているような、見透かした上で黙っているような瞳が苦手なんだ。
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