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 事件は唐突におこる。 往診にきた古坐魅と北洛と共に叶は広い庭で遊んでいた。  鳥の声と穏やかな木々のざわめき、子供のはしゃぐ声。なんとも穏やかな午後の時間に水を差すように「ぼちゃん」と池に子供くらいの重さのものが落ちる音が聞こえた。 「……なんだ?」 「なにか落ちたね」 「なんだろ、たまに間違えて入ってきた動物が池に落ちる事があるんだけど……」 北洛、古坐魅、叶はすこし離れた場所にある大きな池に向かった。  木が美しく配置された庭は程よくさし込む日射しは心地よい塩梅に計算されている。 「仔猫とかだったらどうしましょう……前にあったんですよね」 「俺が拾えばいい。大丈夫だ、センセイもいる」 「そうそう、司紋くんは泳ぎも足も速いから大丈夫だよ。僕は気道確保とかくらいならできるかな……」 人間相手ならいいけど動物は難しいんだよ?とぼやきながら歩けば目的の場所が見えてきた。 「あ、あそこです!」 日射しが燦々と降り注ぎ、一見なにも浮いていないように見えた。叶が池に走りよろうとした瞬間、丞が叶を止め、その眼を隠した。 「……司紋くん、お屋敷に戻って大きめのタモと警察に連絡してくれるかな」 穏やかな口調に似合わない視線と池に浮かんで流れてきたモノを確認し、北洛は端末を取り出した。 「くろいもの、でてきたの……?」 とても静かな叶の声に丞は唇を噛み締めた。

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