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Proof.4

由良にはきっと引力がある。 その姿を初めて目にした瞬間、惹かれて、焦がれて、文不相応にみっともなく欲してしまった。 由良に釣り合う可愛らしい容姿をしていれば―――と、何度も夢に思う。 自分がオメガである事をあれほど嫌悪していた筈なのに。由良に恋をしてから、オメガである事を呪う気持ちはなくなり、いつの間にか自然と受け入れていた。 由良のお陰で、随分と息がしやすくなった。 だから、とても感謝している。 「江ノ島くん?」 「呼び出して悪いな。聞いて欲しい事がある。」 緊張しすぎて、吐きそうだ。緊張とは無縁の性格だったから、逃す術が分からない。 ドドド―――と、激流のような自分の心臓の音を聞きながら、来斗は口を開いた。 「オレは由良が好きだ。」 来斗の告白に、江ノ島が息を飲む。 「由良をずっと見てた。年中ミルクティーを飲んでるのも、告白されたら困ったように断るのも、持ってる物はモノクロばっかりなのも、空が晴れてると気持ち良さそうな顔して走るのも、全部、見てた。由良の全部が好きだった。」 ちゃんと由良の美しい顔を見て、来斗は想いを告げた。初めての告白だ。言っちまった、と後悔する気持ちは大きい。 目を見張りマジマジと見返してくる由良に、恥ずかしさも限界を向かえ、来斗はとうとう逃げるように足元へ視線を下ろした。 本題はここからだ。 「好きだから。おまえとは『運命』だけど、番になりたくない。」 「え―――、」 「体だけの関係とか、オレには無理なんだ。嫉妬するし、束縛するし、好かれたいし、好きだって言いたい。オレ、うざいだろ?分かってても、由良の嫌がる事ばっかすると思う。だから、番にはならない方がいい。」 言いたいことを言い終わると、来斗は口を告ぐんだ。ププッと遠くで車のクラクションの音が聞こえる。 由良は考えついるのか、何も言わない。30秒ほどの沈黙で痺れを切らして、来斗は顔を上げて、―――目茶苦茶びっくりした。 ―――トマト。 由良がトマトのように顔を赤くしていたのだ。 来斗の前ではずっとペースを崩さなかったし、いつも女からの告白に困った顔をするだけで。 なのに、今は狼狽も顕に立ち竦んでいる。 初めて目にする由良の表情に、ドッ―――と、来斗の顔が噴火した。熱くて堪らない。 有り得ない。期待してしまうではないか。信じられない。もしかすると―――、 ―――両想い、じゃないのか、なんて。 イッパイイッパイになった結果、来斗が半ギレで睨み付けると、由良が照れた顔のまま微笑む。 ―――うぉぉぉっ、何だ、その顔。王子か!王子だな!オレの心臓、どうするつもりだ。息ができねえ、どうしよう。死ぬかも。 来斗が生命の危機を感じて悶え苦しんでいると、いつの間にか由良が近寄っており、五センチの距離で覗き込まれていた。 「江ノ島くん。」 「ぎゃあっ!」 来斗が飛び退こうとすると、ガシッと由良に手首を掴まれた。 「ゆ、ゆ、ゆ―――」 手首から伝わる由良の体温に、名前を呼ぶことすらままならない。 由良が告白のちキスをし、来斗が本当に息の根を止められるまで、あと30秒。 全てを見ていた仲間たちが現れて、囃し立てられるまで、あと60秒。 目を血走らせた女子に囲まれるまで、あと3日。 そんな幸せな未来をまだ知らず、来斗はワァワァと喚きながら、由良の手を必死に振りほどこうとしていた。 End.

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