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Proof.3
人は慣れる生き物で、何だかんだと1週間もすれば、由良の存在を受け入れてしまっていた。一緒にいる事が心地よいなど、傍にいないと不安で落ち着かないなど、冗談にしても笑えない。
こんなつもりではなかった。
ハハッ―――と、来斗の口から乾いた笑いが零れる。
「おい、聞いてんのか、エノ!」
目の前にダチの山本翔大のアップが広がり、うおっと来斗は背を仰け反らせた。
アップに耐えきれない顔だ―――と、失礼な事を思う。由良の顔はどんなに近くで見ても、毛穴ひとつ、ニキビひとつない。さすが『王子様』だ。
「何ひとりで笑ってんだよ。大変なんだって、王子様が女といるらしい。どうすんだ?」
「はぁ?アイツが女といようが、オレには関係ねえだろ。」
ぎゅうと苦しくなった胸を押さえて、来斗は何でもないような顔をして見せた。
何ともない、何ともない―――と、一種の癖のようにひたすら自分に言い聞かせる。
「ありまくりだろ。女に取られていいのかよ?」
「別にオレのもんじゃ―――、」
「エノ、そろそろ正直になれって。あの王子様が、由良が好きなんだろ?オレたちにはバレバレだかんな。」
え?―――と、来斗が周りを見ると、教室にいる仲間たちが呆れたように苦笑いしていた。ジワッと手に汗が滲む。
「つーか、ずっと好きだったの、みんな知ってんだぜ。」
「は、え、あ?」
「1年の頃から、由良の事、ずっと見てたじゃねえか。そこの窓際で毎日毎日、由良が走ってる所、ボウッと眺めて。廊下に貼られた成績表も、オレらに全然関係ない、由良の名前があるの見てニヤニヤして。由良が女にコクられたって噂が耳に入ったら、昼メシ抜くくらい落ち込んで。」
―――なんだそれ、
「そういうのずっと見てたからさ、エノが由良と一緒にいるの、すげえ嬉しいっていうか。」
尋常じゃなく顔が熱い。
あんなに由良への気持ちを必死で隠していたつもりが、周りにはバレバレだった訳で。
現在、仲間たちから見守るような生温い視線を浴びており、恐らく、来斗が気付かなかっただけで、ずっとこんな目で見られていたのだ。
信じられない。信じたくない。
「ふざけんなっ!あんなヤツ、見てねえし、好きじゃねえし、知らねえしっ!ちくしょう―――、死にてえ!」
うぁぁっ―――と、真っ赤な顔で叫びながら、来斗は頭を抱えた。それを仲間たちは、やはり春の日だまりのように生温い目で見ていたのだった。
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