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第1話
*
自分では酒に強いつもりでいた。
けれども今夜はキャンプ最終日ということで、どうやら飲み過ぎてしまったようだ。
だって今、俺の目の前には信じられない光景が広がっている。
「これって、どう見てもUFO、だよな」
自然と独り言が漏れた。
*
道に迷い、いつの間にか圏外になってしまったスマホのライトだけを頼りに、山道を彷徨っていた雪人(ゆきと)の前に突如現れたのは、鬱蒼としげる木々で隠れるようにして鎮座している未確認飛行物体……UFO。
……泥酔した俺が見ている幻覚なのか、それとも映画のロケでもやっているのか。
額に手を当て平衡感覚を保つ。
少しめまいがするので、やはりこれは酔った脳が見せる幻覚なのだろう。
幻覚にしては妙にリアルだったが、そう結論付けた雪人はこうなったらとことん幻覚につき合ってやろうと、その物体に近づいた。
すると突然、UFOの扉が開く。
「うわっ……」
反射的に身構えた雪人だが、扉が開いただけで、中からグロテスクな宇宙人の幻覚が出て来ることはなかった。
しばらく待ってみても扉が閉まらないので、雪人は恐る恐る中に入ってみる。
「……マジかよ……、すげー」
思わず感嘆の声が出てしまう。入ってみた幻覚のUFOの中は様々な複雑そうな機器で囲まれていて、まるでSF映画の中に入り込んだような気分がする。
操縦席と思われる場所に腰かけるとその座り心地の良さは幻覚のわりに最高で、歩き疲れていた雪人は背もたれに体を預け眠ってしまった。
「……ろ。起きろよ。起きろってば」
少年の声がしたかと思うと、恐る恐るといったふうに体を揺すられる。
「……ん……」
まず最初に飛び込んできたのは、真紅の瞳をした大きな目。
……すごい綺麗だ……。
まだ酒が抜けきっておらず、ぼんやりとした頭で雪人がそんなことを思っていると、きつい口調で少年が問い詰めて来る。
「あんた、誰だよ? どうしてここにいる?」
徐々に雪人の頭もクリアになっていき、はっきりと少年の全体像がつかめた。
真紅の澄んだ瞳と真紅の艶やかな髪。顔立ちは幼いが端整で。顔は小さく八頭身どころか九頭身くらいに見える。
歳は十代半ばくらいだろうか。
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