5 / 62
第5話
幼いが端整な顔立ちも、ほっそりとした体も記憶の中に焼き付けられている姿そのものだ。 ただ空は真紅の髪と瞳ではなく、淡い茶色の髪と同色の瞳の色をしていた。
他人の空似?
一瞬そんなふうにも思いかけたが、ここまでの美少年がそうどこにでも転がっているとは思えない。
それに空の方も驚いた顔をして雪人を見ている。
「なんで、あんたがここにいるんだよ?」
空があからさまに顔を顰める。
「それはこっちの台詞だよ」
「ここは俺ん家なんだから、いて当然だろ。なに? 今日から来る家庭教師って、もしかしてあんたかよ?」
口の悪さもあの夜と同じだ。
「そうだよ。……中に入るぞ」
雪人は部屋の中へと入り、扉を閉める。
空が座っている椅子の横に置かれた雪人用の椅子にどさりと腰かけ、思わず頭を抱えた。
いったいどういうことだ? あれは夢じゃなかった?
「……なあ、聞いてもいいか?」
「なに?」
「あの、例の乗り物……どうしたんだ?」
「ああ、あれはコンパクトにたたんで、木の陰に隠してある」
空の答にますます頭を抱える。
ともだちにシェアしよう!